「チャイナ・シンドローム」 1979年米 評価4.5
監督:ジェームズ・ブリッジス
出演:ジェーン・フォンダ、ジャック・レモン、マイケル・ダグラス他
1986年、1997年、2021年4月観賞
カリフォルニア州にある原子力発電所が、再起動に合わせTVの取材を受けている最中に地震によるトラブルで緊急停止する。その際に感じた微細な振動を気にした主任技師のゴーデルは再点検を主張するも、再起動を急ぐ経営陣は取り合わずに再起動の準備を進める。ゴーデルが更に調べると杜撰な溶接検査の実態もわかり、彼は中央制御室を占拠して問題点の訴求をTVを通じて行うことを画策する。
原子炉建屋ドームの背景は合成なのかもしれないが、タービン建屋は本物の発電所内部と考えられるし、PWR(沸騰水型軽水炉)の原子炉建屋内部の蒸気発生器が4基並んでいるところや、現代のプラントの中央制御室では本作での初歩的なミスはあり得ない設計になっているのだが、制御盤やアラームの設定など、当時のものとしてかなりしっかりと描かれており、そのような現実的なベースがあるため、人間ドラマがより一層引き立つ。
よくよく考えると、主任技師が殺害されること以外は大した事件は起きていないのだが、3回目の鑑賞なのに、冒頭からラストまで緊迫感のあるハラハラしっぱなしの展開。その要因は上述の発電所の描写と程よく抑制された俳優たちの演技。
特に、主任技師を演じたジャック・レモンが素晴らしい。彼は「お熱いのがお好き」や「アパートの鍵貸します」でのコミカルな演技もさることながら、「酒とバラの日々」や「ミッシング」といったシリアスな演技では人間的な深みまでも即座に表現できる名優で、私なんかは後者のインパクトが強くて、本作もその系譜になるもの。目や表情、動作で色々な背景や感情までも表現してしまうジャックレモンに、硬派なキャスターを目指しているキンバリー(ジェーン・フォンダがはまり役)とフリーのカメラマン、リチャード(マイケル・ダグラス)を絡ませる展開はストーリーテリングとしても見事で、「チャイナ・シンドローム」という言葉を世に知らしめたというおまけもついたが、映画としても傑作と呼べるものと思う。