「娘・妻・母」 1960年日 評価3.5
監督:成瀬巳喜男
出演:森雅之、高峰秀子、原節子、三益愛子、宝田明、草笛光子他
2021年3月観賞
成人した二男三女と母親という構成の坂西家。子供らは長女早苗を除きみな仕事を持った現代人で、母親は長男夫婦と末娘とともに実家で暮らし、皆、中流より上の生活を過ごしてきた。ある日、上流家庭に嫁いでいた早苗の夫が事故で亡くなり、早苗は嫁ぎ先を追われ、実家に戻ってくる。
長男が森雅之でその妻が高峰秀子(二人は「浮雲」の主演)、長女が原節子で、劇中絡むのが仲代達也と上原謙(原と上原は「めし」で主演)、次女が草笛光子(今見ると原節子とよく似ている)、その姑が杉山春子。次男が宝田明でその妻が淡路恵子。ラストに出てくるのか笠智衆などなど、絢爛豪華な出演者群。
ふた昔前の家族や兄弟の在り方が変わってきた時代背景の中、ある大家族の現代的な気持ちへの移り変わり、家族の在り方の変化を描き出す描写はさすが職人監督と言われる成瀬巳喜男の真骨頂。また、一昔前の人間である私からすると、家の内部の作りとかが妙に懐かしく、ノスタルジーを感じる。
映画としてはほとんど非のない仕上がりなのだが、この、オールスターともいえる面々、また、それぞれが名作で共演しているものだから、彼らの家族は何となく現実離れしているといわざるを得ないし、成瀬ファミリーの同窓会的雰囲気もあって生活感が薄い。その中でも、焦点が当たってない場面でも細かな演技を終始貫き通す高峰秀子が、やはり秀でていると思う。