「愛のむきだし」 2008年日 評価1.5


監督:園子温
出演:西島隆弘、満島ひかり、渡部篤郎、安藤サクラ他

2021年3月観賞

 キリスト教一家の一人息子として厳格に育てられた高校生のユウは、亡き母の面影をマリア像に偲び、いつしかマリア様のような女性と一緒になることを夢見ている。ある日ユウはチンピラと戦うヨーコという女子高生を助け、彼女こそがマリア様と感じることとなる。

 まず、ストーリーの軸は主人公ユウとヨーコの純愛?のようなのだが、この二人のみならず、どのペアにもお互いに心を通じ合えたシーンが一回もなく、この映画に愛の存在はもちろん、むきだしの愛を感じることもない。その、軸がはっきりしないことに輪をかけ、キレの乏しいアクションには苦笑しかなく、パンティ盗撮(しかも占めて2時間以上はこれ絡みのシーンと言える)と、中学生ですら笑いもしないだろう勃起ネタでのコメディシーンが寒くて痛い。

 私は、映画の尺の長さは、それが必然性に基づくのであれば気にしない性質なのだが、本作は4時間という長尺が苦痛でしかない。それは、本作がデフォルメされた演出と現実離れした内容から、登場人物の誰にも感情移入できないどころか、どの人物の心境にも共感できないというのが主要因。また、必然性がなく「こういうシーンを入れたら面白いんじゃね?」的な考えから無駄に挿入されているとしか感じられないシーンが多いことが2つ目の要因。3時間を過ぎたあたりからは、スマホをいじりながらの鑑賞に。途中でやめなかった最大の理由は「ここまで3時間観てきたのだから…」という義務感に近い感情。描きたい映像を最優先とした結果、ストーリーが破綻しており、4時間という無駄な時間を過ごしてしまったというのが正直な感想。

 モヤモヤ感が拭えないままラストに突入していくが、そのラストにも愕然。ユウが過去を思い出して全力疾走でヨーコを追うシーンの信憑性のなさったら。。。病院生活を長く続けている人間があんなしっかりした姿で全力疾走できるわけがないし、ユウは記憶喪失だったんかい!???違うだろ!!

 1点台の評価は18年ぶり。最近の低評価映画(例えば「ライフ・イズ・ビューティフル」や「はじまりのうた」)は私にとっては低評価でも、人によっては心に響く点はあるだろうな、と感じられたが、本作はそういう点すら私には感じられなかった。ただ、必然性のないシーンを削って、新興宗教のメンバーがキリスト教一家を取り込むというストーリーに焦点をあて(この部分だけは本当にあるかもと背筋が冷えた)、2時間にすれば評価3近くまでは持ち直すかな、とは思う。

 あと、今や演技派女優として確立している満島ひかりと安藤サクラの奇抜な演技が突出して目立つのだが、もともとエキセントリックな演技ではその俳優の力量はわからないもので、そのインパクトはあっても、本作の段階では名演技とまでは言えないし、二人のインパクトが強いがゆえに主人公役西島隆弘とのバランスが悪いことになっている。