「グリーン・マイル」 1999年米 評価4.5
監督:フランク・ダラボン
出演:トム・ハンクス、マイケル・クラーク・ダンカン、デヴィッド・モース他
2021年2月観賞
1935年、コールドマウンテンの死刑囚収容棟に、黒人の大男が収容される。物静かな彼は、看守主任のポールの尿道感染症を不思議な力で治すとともに、別の囚人が飼っていて、意地汚い看守に踏みつけられたネズミをも治す。そんな力を目の前で観ていたポールや看守の同僚は、その力を脳腫瘍を患っている収容所長の妻に施せないかと画策する。
核となる黒人の大男である主人公コーフィーの所業はもちろん、看守主任のトムを取り巻く看守仲間のチームが人間的にできた人たちであることから醸し出される雰囲気も併せて、ミステリー要素を含みながらもファンタジー映画に分類される内容。このようなファンタジーをどう思うかで、評価が決まるという作品。映画はアクションやアニメはもちろんサスペンスも大半がファンタジー要素を含むものであり、ファンタジー=現実味がないという観点のみでその映画を判断するものではないはずで(逆に完全なドラマ映画で現実味がないと一気に評価が落ちるが)、私にとって本作の内容はすんなり受け入れられ、とてもよくできた映画だという感想。
6冊にも及ぶスティーヴン・キングの原作を3時間にまとめ上げた力作。知った顔の脇役がわんさか出てきて、それぞれの持ち場で持ち味を如何なく発揮しており、登場人物それぞれのドラマがしっかりしている。特にお互いに信用しあっている看守たちの佇まいと行動が素敵で、かなり強烈なエピソードや嫌な登場人物もいるのだが、全体的に暖かな雰囲気を醸し出している。
また、極限状態におけるエゴイズムなどの人間の醜さ、さらには、神が人間界に授けたともいえる、癒しの力をもつコーフィをもってしても人間の浅ましさは救えないというシリアスな内容、死刑囚たちの尊厳や獄中でも人としての優しさは忘れてはならないという看守たちの温かい目線など、3時間をかけているからこそ十分描かれ得たものであり、2時間に収めてしまっていたら、単なるファンタジー映画にしかなっていなかったろうと思う。