「サイダーハウス・ルール」 1999年米 評価4
監督:ラッセ・ハルストレム
出演:トビー・マグワイア、シャーリーズ・セロン、マイケル・ケイン他
2021年2月観賞
ニューイングランドの山の上にある孤児院で育ったホーマーは、孤児院長であり産婦人科医でもある院長から息子のように愛され、産婦人科の技術も教え込まれ、孤児院の重要スタッフとして成長していた。しかし、海さえも見たことがなく孤児院で隠遁生活を送っていたホーマーは、堕胎のために孤児院を訪れた若い男女に、自分を一緒に彼らのリンゴ農園に連れて行ってくれるよう頼み、新たな人生への第一歩を踏み出し始める。
一般的な日常生活を舞台に、奇抜な考えや経緯を持ったちょっと変わった登場人物を交え、全体的にはどんなにつらい出来事があっても前に進んでいこうというまとめ方をするジョン・アービング作品が、私は結構好きだ。そのような作風は「マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ」のラッセ・ハルストレム監督が題材にするにはうってつけで、本作も、小説も映画も高水準だった「ガープの世界」や「ホテル・ニューハンプシャー」といった代表作と同様、硬質でありながら柔らかな雰囲気がうまく表現された良作である。
特に、孤児院で純粋に育ち、純粋すぎてどんな環境に投じられても疑問に感じずに真正直に生きる青年ホーマーをトビー・マクガイアが好演。また、厳しさも優しさも持った育ての親であり産婦人科の先生でもあるラーチ先生を演じたマイケル・ケインの円熟味を感じる演技が、映画全体を暖かく包み込んでいる。
一方で、題名にもなっている「サイダーハウス・ルール」が、物語の中でどういう意味をもつのか理解できなかったところや、いくつかのエピソードがぶつ切りっぽく感じてしまうところが減点。本作のみ原作を読んでいないから真実は不明だが、原作にあるエピソードをたくさん入れすぎたということなのだろうか。あと、シャーリーズ・セロンが若くてまだ顔がぽっちゃりしていて、この時より「告発のとき」(2007年)の方が良いなぁと感じてしまうのは自分が年をくったからか。