「どん底作家の人生に幸あれ!」 2019年英・米 評価3
監督:アーマンド・イアヌッチ
出演:デーヴ・パテール、ティルダ・スウィントン、ヒュー・ローリー他
2021年2月観賞
1800年代初期。中流家庭の子として生まれたデイビッドは、暴力的な継父に虐げられ、一人ロンドンに追いやられて瓶工場で働くことになる。その後も貧しい暮らしをする中でも、ロンドンでよくしてもらった夫婦やかつての実家の召使だった女性の家族などとささやかな幸せを感じながら暮らしていた。そんなデイビッドは自分の生涯を小説として発表し、一躍有名作家となる。
チャールズ・ディケンズの長編小説「デイヴィッド・コパフィールド」の映画化(なので、この邦題、何とかならなかったのか?)。大まかにいうと、かつて自分の周りにいた変わった人々を描写しつつ、それらを題材に小説を書き上げるというのが大筋のストーリーで、ディケンズの自伝的要素もある原作ということで、「ビッグ・フィッシュ」と「ストーリー・オブ・マイ・ライフ 若草物語」を足して4で割った感じ。どうしてもこの2作品と比較せざるを得ないし、これらの作品の出来が良いものだから、低評価となってしまう。
その主要因は、1800年代中期の小説によくありがちな、ストーリーが壮大な反面、登場人物が身の回りの人々のみで、不自然に収束するというところ。本作でも色々な人物が主人公に絡み、それぞれ特徴的で記憶にも残るのだが、慌ただしくストーリーは流れるのでとっ散らかった印象だし、またここでこの人が関わってくるのかよ、と不自然な印象はぬぐえない。
また、映画化にあたって、インド系のデーヴ・パテールが主人公で、黒人が貴婦人役になってたり、中国系の俳優の娘が黒人?という配役も、現代に則したものなのだろうし演出的には問題はないのだが、1800年代のイギリスを舞台にしているのだし、遺伝子を無視した肌の色も、違和感しかない。時代に則した描き方をした結果に対しても目くじら立てて人種差別だとか騒ぎ立てる世界の風潮が、この違和感を生んでいる。