「素晴らしき哉、人生!」 1946年米 評価4


監督:フランク・キャプラ
出演:ジェームズ・スチュワート、ドナ・リード、ヘンリー・トラヴァース他

2021年1月観賞

 大学に進学し、都市計画に関わる建築家になって世界を股にかける活躍を夢見ていたジョージだったが、住宅金融会社の社長であった父の急死や弟の結婚などにより、父の仕事を継がざるを得ない人生を進んでいた。人望が厚く市民に慕われ、美しい妻メアリーとその間にできた4人の子供とともに裕福ではないが幸せな生活を送っていたが、ある日会社の役員である叔父が大金を紛失したことから、人生に絶望し、川に身を投げて生命保険によりその損失を補填する決意をする。

 「アメリカの良心」と呼ばれたジェームズ・スチュワートが主演し、アメリカの良心を謡った作品で、現代でもアメリカで非常に人気が高い。当時30代後半のスチュワートは20歳程度からの役を演じるにはちょっと無理はあるが、「裏窓」~「めまい」あたりのヒッチコック作品の頃よりはぐっと若くて魅力的。また、ドナ・リードはこじんまりしたバーグマンという感じで美しい。この二人が人が良くてみんなに好かれる夫婦を好演している。色々なエピソードの積み重ねで、夢破れたものの父の会社を受け継いだジョージが如何に地域の住民に愛されてきたかが、上映時間130分のうち100分程度を費やして丁寧に描かれ、若干長い感じもするが、これにより心温まるラストにつながっていく。

 ただ、叔父が住宅金融会社の8000ドルを紛失し、それがなければ会社は倒産するという切羽詰まった場面で、ジョージが自暴自棄になって家族に八つ当たりすることや、「自分は生まれてこなければよかった」という発言がなぜ出てくるのかがわからない。それまでに、家族や地域住民たちと幸せに暮らす中でも、自分はもっと違う人生を歩みたかったというような場面があればいいのだが、そういう描写がほとんどない中での上記の展開&発言なので、ラストにつなげるための急転換がかなり唐突で、どうしても素直に感動できない。

 古き良き時代のハート・ウォーミングな映画でその雰囲気は好きなのだが、全編を通して手放しで良い映画とは評価できない、というのが正直なところ。