「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」 2020年日 評価4.5
監督:外崎春雄
出演:アニメ
2020年12月観賞
日本歴代最高興行収入を樹立したと言っても、国内の制作も海外作品の配給も滞りがちな中での上映作品群、しかもコロナ禍で娯楽が限られ、シネコンでは多数のスクリーンで上映されるという特殊状況があったのは事実で、果たしてその記録に値する内容なのだろうか、と思っていた。
また、かなりのレビューから、漫画やアニメで事前準備をした方が良いとの状況も把握していて、映画とは本来作品そのもので1本の映画として成り立っているべきで、事前勉強がなければ楽しめないという映画が、例えば20年、30年後に、興行収入No.1映画として観られる内容と言えるのか?と甚だ疑問に思っていた。その様な気持ちをもって、事前知識を全く入れないまま、鑑賞してみることにした。
結果は、評点が表す通り、間違いなく感動したのである。
前半に多用される、「手抜き画面」(正式になんというのか知りませんが、急に画質が変わりTVマンガみたいな描き方になるところ)では著しく違和感を感じたものの、段々と、本作での中心人物である竈門炭治郎と煉獄杏寿郎の人間性にとり憑かれていく。
いろんなレビューや評論で書かれているのであまり繰り返さないが、確かに、自分自身の意志を強く持つこと、やるべきことをやること、正しいことをすること、上位者は下の者にそれらを身をもって示すことなどの正当性が、今どきの映画(日本に限らず世界的に見ても)には珍しく、清々しく言い切っているところが、元来真面目な私にガツンと響いてくる。
とにかく、本作の最大の魅力は炎柱煉獄杏寿郎である。彼の真っ正直な生き方、言わねばならぬことをはっきりと言う姿勢、人間としての苦しみこそ人として生きることの意味というぶれない人生観と最後の自己犠牲などなど、もう、かっこよくてしようがない。
若い時に見れば、かなり影響されたことは必至で、願わくば、本作を観た若者たちが、単純に鬼を切る戦闘場面のかっこよさだけに憧れるのではなく、彼らの考え方自体に近づきたいと思ってくれたら、それが、この映画がヒットした最大の功労になると思うのだが。。。
観終わると、色々と疑問点を知りたくなる。なぜ竈門炭治郎の家族は惨殺されたのか。妹の禰豆子は鬼なのか?なぜ鬼になったのか?煉獄杏寿郎の父はなぜ世捨て人になったのか?ラストで登場する鬼殺隊や柱の人たちはなんなのか?「北斗の拳」的なところも感じられ(煉獄杏寿郎はなんとなくサウザーを連想)、これは結構、私の好きな漫画じゃないかと興味を持つ。つまり、事前勉強なんていらない。映画から漫画、アニメへ興味を波及させるともいえる作品であり、「事前勉強がなければ楽しめない」ということは決してないことを記しておく。
最後に、この映画が国内最大ヒット作にしては芸術性がない、老若男女幅広く受け入れられたと言えるものではないという意見はあると思うし、私もそう感じる。しかしながら、他のヒット作に比べてより強い思い入れを持った人が多いという事も言えると思う。