「ファイト・クラブ」 1999年米 評価4.5


監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:エドワード・ノートン、ブラッド・ピット、ヘレナ・ボナム=カーター他

2020年12月観賞

 自動車会社のリコール調査課に勤める「僕」は、物欲を満たすことだけに満足を得られる人生に辟易し、不眠症状態。患ってもいないのに睾丸がんの患者の集いなどに出かけて、お互いに慰めあう中で安らぎを求める。ある日、飛行機内で粗暴で危険な風貌の石鹸の行商人タイラーと知り合い、彼の主催する素手で殴りあうファイト・クラブへの参加を進められる。

 スタイリッシュな映像と音楽がのっけから全開で、そこここにわざとらしさのないコメディ的な要素も入れながら、初めは病人たちの集いに癒しを求め、その後は殴り合いの場で自分自身の存在を感じるという奇想天外な展開で、あっという間に物語に惹きつけられる。ほとんど前知識を持たなかったものだから、題名から、バイオレンス的な描写が多い暗い映画かと思っていたのだが、その後のストーリーが最高に面白い。二重人格の二人を描くということは片方の映像は妄想といえるもので、これは「ジョーカー」(2019)の妄想場面と通じるところがあるというか、退廃的な雰囲気の中、自分が何者であるかを悟っていくストーリーはこの映画が先駆的で、20年前にこのような内容の映画を作られていたということに驚く。

 ミステリー調の展開は、後から言われれば、確かに妙な描写があったな、と思うけど、観ている間はその感覚に付き合ってる暇はないというほどの疾走感。ラストはさすがに妄想というオチだと思うが、完全にしてやられたというか、魅力的な暴力男を演じたブラピも、コケティッシュで小悪魔的な女性を演じるとこの頃右に出るもののなかったヘレナも、二人の演技によって評価も加点されるほどのはまり役で、全編通して魅力的な作品である。

 今となってはこんな「僕」のような生き方はできないけども、結婚前の若いころに観ていたら、喧嘩をして痛い思いなんかしたくはないけど、間違いなくブラピの所作にいたく影響されたのではないか?と思うほど、鮮烈な印象を残す快作。

 しかし、フィンチャー監督はブルース・リーのファンだっだのか??「僕」とタイラーの最後の戦いの際のブラピの動きもそうだが、毛をむしって吹き飛ばすシーン(「ドラゴンへの道」のリーvsノリス)、脚を踏みつけるシーン(「燃えよドラゴン」のリーvsボブ・ウォール)は完全にパクリで、思わず笑ってしまった。