「ミセス・ノイズィ」 2019年日 評価4
監督:天野千尋
出演:篠原ゆき子、大高洋子、長尾卓磨他
2020年12月観賞
都心から離れた住宅街の団地に夫と幼い娘とともに引っ越した小説家の吉岡真紀は、毎朝早くから大きな音を立てて布団を叩く隣の老女に悩まされることになる。また、自宅での仕事中に娘が家を抜け出し、隣の老夫婦の家で遊んでいたこと、その状況を何も知らせてこなかったことから、真紀の隣家への怒りは沸点を超える。
ある事件を主観者の目から多方面で描くという手法自体は良く見かけるし、私は最近の日本映画はほとんど見ないので、Youtubeなどへの投稿動画を題材にした映画が数多くあるのかを知らず、本映画のその部分に目新しさがあるのかどうかはわからないのだが、それでも、近年の人付き合いをしない風潮や誰もが撮影者に成り得、プライベートもなにもない世の中になりつつあることへの警鐘を含みながらほっとする内容に収斂していくストーリーは良くできている。
人は誰でも多少の違いはあっても、自分の見たいことしか見ず、したい解釈しかせず、事実が記憶になる際に勝手に補正してしまうもので、本作のような諍いは特に現代においてはどこでも起こりえるのが怖いところ。本作は他人を自分の思い込みだけで判断してはいけないということに気づかせてくれる。
ただ、映画が客観的な視点で描き始めたところからも、老女の行動は奇抜なので、いまいち素直に老女も実はいい人なんだとは感じられないのと、主人公を演じる篠原ゆき子のしゃべり方(役作りの一環かどうかは不明。最近観た「湯を沸かすほどの熱い愛」では聾啞者の役だったし)が嫌いなので、評価的にはこんなところ。