「母なる証明」 2009年韓 評価3.5


監督:ポン・ジュノ
出演:キム・ヘジャ、ウォンビン、チン・グ、ユン・ジェムン他

2020年11月観賞

 韓国の下層階級の町で暮らす、軽度の知的障害を持つ一人息子トジュンとその母。ある日、2人が暮らす町で女子高生殺人事件が発生し、トジュンが容疑者として逮捕。十分な捜査もなしに曖昧な供述をもとに犯人にされてしまう。トジュンが殺人を起こすはずがないと信じる母は警察や弁護士に働きかけるが、当の本人が過去を思い出せないため進展はない。誰もが匙を投げる中、母自ら捜査を始めるが…。

 映画としての出来は悪くはない。役者は達者で、ストーリーも途中からミステリー仕立てになって興味は尽きない、母親の心情もくみ取れる。また、初見の韓国映画であり、よく知らない韓国の下層の生活感がよく分かるところも興味深い。

 ところが、かなり物語のキーになる部分で「なんか、この展開おかしくないか?」というところがあり、その都度、心に引っかかりが残ってしまう。例えば、初っ端。トジュンをひき逃げした黒のベンツに乗っていた4人組をゴルフコースの中で延々と待って見つけるのだが、どうしてその4人が当事者だと分かったのか(この映画の関係者はゴルフコースを回ったことがないのか??)。トジュンがいきなり過去を思い出して「白髪の男!」というのもおかしい。白髪の男は現場でトジュンに見られたんかい?その現場を思い出したのなら自分が女子高生を殺したことだって思い出したんじゃないのか??跡形もなく燃え尽きた廃品回収者の家が一般道の横にあったことが後のシーンでわかるが、それならあの大火事で消防車が多数来て、捜査だってちゃんとやられるんじゃないのか?しかもその中から、母が持っていた鍼灸道具一式が入れ物の表面が煤けただけで見つけられたなんてありえない!など。どうでもいい場面ならスルー出来るが、重要場面でかなりいい加減な描写が多いので見過ごせない。

 また、結局はたとえ殺されたのが売春してた女子高生と買っていた大勢の男のうちの一人であったとしても、理由もなく殺人という重罪を起こした二人なので、彼女らを初め、誰にも感情が寄り添えたり、惹かれるところもないため、傍観者のまま観終わることも高評価にならない要因である。