「Shall We ダンス?」 1995年日 評価4.5


監督:周防正行
出演:役所広司、草刈民代、竹中直人、渡辺えり子、柄本明他

1997年、2020年11月観賞

 妻と中学生の娘の三人で郊外の一軒家に住むしがない中年サラリーマンの杉山は、通勤電車から見る社交ダンス教室の窓際に佇む美しい女性に惹かれ、そのダンス教室に通うようになる。初めはその女性目当てだった杉山だったが、次第にダンスと仲間との交流に楽しさを覚え、地域大会を目指すようになる。

 いやいや、役所広司が若い!それに、柄本明も本木雅弘も出演してたんだねぇ。渡辺、竹中という個性派もぶっ飛んでる一方で、それぞれのキャラクターの掘り下げが丁寧なためどのシーンをとっても楽しめる。今の映画では全くNGとなっている「デブ」「チビ」「気持ち悪い」「ハゲ」というセリフがバンバン出てくる。それを表面化しなくたって、日常ではそんな言葉は出てくるのが現実で、それでもそれらをはねのけて、本作のようにパワーに変えてダンスを楽しむ姿勢が清々しい。

 確かに本作が映画デビューのバレエダンサーの草刈民代は表情に乏しくセリフ回しも下手なのだが、本作のヒロインはダンスがずば抜けて上手くなくては務まらないので仕方ないだろう。その凛とした雰囲気と姿勢と個性的な面構えはやはり美しく、俳優として未熟なところはあるが主人公が魅了される雰囲気を纏っていること自体は否定しようがない。

 23年ぶりに観返すと、だいぶくどいセリフや説明調の場面が多いのが少し気になるとはいえ、サラリーマンの悲哀や家族内での微妙な空気感、一般市民の生活感などもきちんと描かれている一方で、コメディ的要素も多分にあり、段々とダンスがうまくなっていく高揚感もうまく表現され、ラストも適度な熱量で締めくくられていて、とてもバランスの良い作品で、初鑑賞時と同じ評価4.5。

 とにかくも、本作がきっかけとなってタレントが社交ダンスに取り組むという番組が乱立されたのは事実で、社交ダンスの、社会における受容性を著しく向上させた功績は大きいし、そうさせるほど魅力的で楽しい映画であることは間違いないだろう。