「ミッドナイト・イン・パリ」 2011年米・スペイン 評価4
監督:ウディ・アレン
出演:オーウェン・ウィルソン、レイチェル・マクアダムス、マリオン・コティヤール他
2020年11月観賞
いつかは大好きなパリに住み、執筆中の小説を書き上げたいと願っているハリウッドの脚本家ギルは、婚約者のイネスとともに、イネスの両親の旅行に同行する形でパリを訪れるが、酔った深夜、パリの裏通りで招かれるまま乗ったアンティークカーから降りると、そこはギルが憧憬していた1920年代のパリだった。
懐かしき時代やおしゃれな展開というのは「カイロの紫のバラ」や「マンハッタン」といった全盛期のアレン作品を彷彿とさせ、それらの作品も大好きなのだが、本作では1920年代や1890年代の有名な画家や小説家がわんさか出てくるので、元来絵画や小説もかなり好きな私にはたまらない展開で、自然に映画に惹き込まれて、そのいちいちのシーンににやけが止まらない。
また、5年前の2015年12月に仕事でパリに3泊した私は、テロ直後で閑散としていた市内の目抜き通りを歩き回って、そのすべての建物が調和している佇まいに、明らかに日本の街とは、もつ歴史の重さが違うことを痛感した。大都市でありながらその中心には歴史的な建造物が並び、本当に本作で描かれるような街並みであって、その時の何とも懐かしい思い出が蘇ってきて、この点も個人的に本評価が上がる要因になる。
30年前だったら間違いなくアレン本人が演じていたであろう、天然で素朴な主人公ギルは、結局性格の合わない婚約者と別れるとともに、といって、あこがれ続けた1920年代のパリに逃避することはなく、現代で生きることを選択する。夢物語は夢物語として胸にとどめたその選択は現実的であり、また彼にとって前向きなものである。そして、古レコード屋の若い女性店員と雨降るパリを歩いていくラストシーン!こんな素敵なラストシーンは本当に久しぶりに観た。ウディ・アレンは、時々とっても私の感性に合う作品を作るので油断ならない。