「トータル・リコール」 1990年米 評価4.5
監督:ポール・ヴァーホーヴェン
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、レイチェル・ティコティン、シャロン・ストーン他
1992年、2020年11月観賞
近未来。平凡な建設作業員のクエイドは毎晩火星の悪夢にうなされていた。そんな背景もあって、ある日クエイドは、脳に記憶を植えつけることによって疑似体験ができるリコール社において、火星でのスパイとしての疑似体験を楽しもうとするが、その事前準備中にクエイドの記憶がよみがえる。実は彼の正体は火星にいたハウザーという男であるというのだ。
この時期のシュワちゃん映画は無駄に銃撃シーンが多いものだが、フィリップ・K・ディックの短編小説『追憶売ります』が原作ということもあり、本作は話の展開が速くて(主人公クエイドの夢の中の話だからという理由もある(後述))無駄がなく、110分が本当にあっという間に過ぎる。
冒頭のジェリー・ゴールドスミスの音楽もちょっと懐かしい感じがいいし、シュワちゃんにシャロン・ストーン(アクションもなかなか!)という濃い配役、憎たらしい悪役、ヴァーホーヴェン監督作らしいグロさ(今の感覚でいえばそれほどでもない)、ハチャメチャさとチープさもひっくるめて魅力満載の娯楽作。
結局、クエイドが一度記憶をなくされる必然性はなく、ストーリーは細かいところはすっ飛ばして先へ先へと進むことや、いくら何でも数分で火星の大気を包み込む酸素は供給されないだろうという雑なラストなど突っ込みどころはあると思うが、そのような展開だからこそ、この物語はクエイドがリコール社の商品の中で見た夢だと解釈できるので、あまり気にならない。
とにかく、太ったおばさんから出てくるシュワちゃん、3つの乳房を持つ女、真空状態の火星面で顔がむくみ目が飛び出るという描写、ミュータントであるクアトーの造形といった、一度見たら忘れられない映像が多数あるという時点で、娯楽アクション映画として間違いなく勝ち組で、その上ストーリーも文句なく面白いので、このジャンルの傑作のひとつと思う。28年前の鑑賞時と同じ4.5点を献上!