「はじまりのうた」 2013年米 評価2


監督:ジョン・カーニー
出演:キーラ・ナイトレイ、マーク・ラファロ、アダム・レヴィーン他

2020年11月観賞

 かつては敏腕プロデューサーだったダンは今は妻と15歳になる娘との関係もうまくいかず、レコード会社を首になる。一方、製作した曲が映画に採用され、人気が出始めた恋人のデイヴとともにイギリスからニューヨークへやってきた、作曲パートナーのグレタは、デイヴの浮気により彼と別れたところ。そんな二人がライブバーで出会い、グレタの作曲能力に興味を持ったダンは彼女をプロデュースすることに。

 冒頭、ダンの生活ぶりが描かれるのだが、とにかく荒れているだけで、その奥にある人間的な魅力というものが全く感じられないため、しょっぱなから惹きつけるものがなく、「こりゃ、まずいんじゃない?最後まで見る価値あるか?」と嫌な予感。その後もとにかく、ストーリーと人物の作り込みが雑で、話に全く入っていけない。

 挿入曲はいい曲が多いものの、「上手い一般人」のレベルを出ないナイトレイのボーカルによる曲が結構数多く長時間続くので、「そろそろいいんじゃない?」という気持ちを抑えられない。1980年代に思いっきり洋楽に嵌まっていた私からすれば、本作で描かれるような絵空事に真実味はなく、そんな話をベースに、家族とうまくいかなかった男や、なぜだかいきなり売れてしまった彼氏デイヴを理解しようともせずひっぱたいて勝手に失恋するグレタ、結局は元の恋人を思うデイヴというステレオタイプの登場人物たちがなんとなく丸く収まっていく展開も、「あら、やっぱりそうなるんですか」としか思えない。それはまるで、出来合いのインスタント食品のようで、結局冒頭に感じていた予感が的中。久しぶりに鑑賞時間が無駄だったと思った凡作。

 あと、これはどうしようもないことだが、キーラ・ナイトレイの顔の造形と表情の作り方がどうしても好みではないので、その観点からも全く惹かれることもなく、よかったのはラストの展開だけ。

 全くの蛇足ですが、グレタの旧友役のジェームズ・コーデンはYoutubeでビッグ・アーティストと車の中で本人と、本人の曲のカラオケで大盛り上がりするという動画をUPしている人物で、夜に本作を観た日の昼間に、彼のその「Carpool karaoke」という動画シリーズを見つけた。彼自身も、ましてや本作に出演していることなんかも知らなかったので、全くの偶然。彼の「Paul McCartney Carpool Karaoke」を見ると、本当に楽しそうで、本作より、こっちの動画のほうが涙が出てくるくらい感動してしまう。