「手紙は憶えている」 2015年独・加 評価4


監督:アトム・エゴヤン
出演:クリストファー・プラマー、マーティン・ランドー他

2020年10月観賞

 妻を亡くし、認知症の症状が出てきている90歳に近づこうという老齢のゼヴは、同じ老人ホームで暮らすマックスから、「約束したことを果たせ」と1通の手紙を受け取る。目的もわからぬままその手紙の内容に従い、老人ホームを抜け出して人探しを始めるゼヴ。誰を探しているのかさえわからないゼヴ。その結末は。。。

 主人公が超高齢(クリストファー・プラマー85歳、マーティン・ランドー83歳)であるため、スピーディなアクションも展開もない。認知症で目覚めるたびに死んだ妻を探す主人公ゼヴは、もちろん旅の目的も忘れて、そのたびに使命が書かれた手紙を読み返す。この展開はほかの批評にもよく見られるように「メメント」を彷彿とさせるが、老いることで誰もが経験するであろう状態なので、かえって身近に感じられる。

 私の親世代も映画で描かれているような老齢に差し掛かっていることもあり、主人公や探し求めている人物の緩慢な動きは見慣れたもので、そのような動きしかできない中での無理のない展開であり、実質1時間半のコンパクトな尺の中でコメディ的要素も織り交ぜながらテンポよく進み、アクションはなくても緊迫感を感じさせる魅力あるストーリーに惹き込まれる。若い世代の方には物足りないかもしれないが、上質なサスペンス映画だと思う。