「田園に死す」 1974年日 評価4

監督:寺山修司
出演:高野浩幸、菅貫太郎、八千草薫他

1990年、2020年9月観賞

 文学者となった主人公は初の映画を製作中。その中で、自伝的な過去を描いているが、それは美化したもので事実を描いていない。それに苦悩した主人公は20年前の15歳の主人公と遭遇し、自分の本当の過去、現在の葛藤を描くことに悩み続ける。

 寺山修司の自伝的作品かと思っていたが、出身地の青森県を舞台にしているものの、自身の人生とはだいぶ違うので自伝ではないことが後でわかった。

 正直なところ、不思議系の映画である。上述のようなストーリーのなか、恐山の場面を多用し抽象的だが印象に残る風景映像が多いのだが、ところどころ難解な寺山修司の短歌が挿入され、主人公のグロテスクで暗い過去の想い出の描写が入ってくる。登場人物はほとんど白塗りの顔をしているのも奇妙で、これが欧州の映画だったら、多分途中で観るのが嫌になったと思うが、日本の原風景をベースにしているのでノスタルジックな感傷ももちつつ飽きるということはない

 30年ぶりの観賞。大学3年生だった当時の評価は4.5であった。後半、刈田で将棋を指す主人公と20年前の自分の場面で突如現れる歌手の「たかが人生、騙されたって嘘ついたってぶっ飛ばしたって、明日になりゃ花一輪。てめぇはそんなところで居座っているが明日になりゃくたばっちまうぞ!!」というセリフにいたく感化された覚えがある。

 特異で、万人にお勧めできるという作品ではないと思うし、今冷静に評価すると初回の点より落ちてしまうが、観た時代によって、評価は大きく変わる映画だと思う。