「スラムドッグ$ミリオネア」 2008年英・米 評価4.5
監督:ダニー・ボイル
出演:デヴ・パテル、マドゥール・ミタル、フリーダ・ピント、アニル・カプール他
2020年9月観賞
インドのスラム街に住む青年ジャマールはクイズ番組「ミリオネア」で正解を続け、ついに1000万ルピーを獲得。しかし2000万ルピーを賭けた最終問題を前に、警察に不正疑惑で逮捕されてしまう。ジャマールは不正をしていたのか?警察での聞き取りの中で彼はこれまでの生活を語り始める。
クイズの進行と警察での取り調べ、そしてジャマールのこれまでのスラム街での生活が並行して描かれる。日本でも人気のあったクイズ番組なのでその仕組みをすんなり受け入れられるため、意識は、幼年期、少年期、青年期と丁寧に描かれるスラム街での生活により、主人公級(ジャマールと兄のサリーム、ヒロインのラティカ)のそれぞれ分かれていく人生に集中できて、現実の過酷さとノスタルジーが、バランスを取りながら見事に心にささってくる。
ストーリー的におかしいと思う場面もある(特になぜ番組収録の当日に警察に捕まり拷問まで受けるのか?など)のだが、スピーディで密度の濃い内容なので観ている間はそこに気をとられることはなく、映画的な楽しさに満ちている作品だと思う。ジャマールが正解を続けたのは、過去の人生で経験したことが設問にたくさんあったという運があったのだし、結局は弟の賭けに自分の人生も賭けた兄の手助けにより、ラティカと共に幸運を手にするストーリーは、ベタだけど映画的な魅力に溢れていて好きだ。なにより、最終問題でのライフライン使用でラティカの声を聴いた時の、間違っても幸せだというジャマールの表情がとても良い。
インド人(またはインド系)の出演者しか出てこないくらい徹底することで、インドの生活の雰囲気が良く伝わってくるし、最後のダンスシーンはインド映画へのオマージュが感じられて、ダニー・ボイルという監督は、純粋にわかりやすくて映画的魅力のある作風が好きなんだろうなと思うし、内容が私にとって嵌る時、その作品を好きになるのだろう。