「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」 2019年米 評価4.5

監督:グレタ・ガーウィグ
出演:シアーシャ・ローナン、エマ・ワトソン、フローレンス・ピュー、ローラ・ダーン、ティモシー・シャラメ他

2020年8月観賞

 南北戦争時代、父が北軍として出征して母と4姉妹(メグ、ジョー、ベス、エイミー)で慎ましく暮らす一家の10年間程度(ミドルティーンから20代半ばくらい)を、家庭内での様々なイベントや恋、現実に直面する生活などを通して成長していく姿を描く、オルコットの名作「若草物語」をベースとした作品。「若草物語」は自伝的小説であり、オルコットは次女であるジョーにあたる。本映画版では「若草物語」を売り込むような女性に成長した時代と、少女時代を行ったり来たりしながら対比的に描いていく。

 「若草物語」とその成立の背景を全く知らない私は、過去と現在が入り乱れる進行と聞いていたし、冒頭からいろんな登場人物はが出てきて、描かれる時代も転換するので、これ、ついていけるかな?と思ったのだが、全くの杞憂に終わった。それぞれの性格付けがしっかりなされており、しかも皆が魅力的な一面を持っていて混乱することはない。細かいエピソードの積み重ねでありながら、それが登場人物たちの人間としての成長にも結び付いていて、時系列の面でも非常に巧みに作られた結果として、観客が自分の感性に合うエピソードを複数感じられる、とても愛すべき作品に仕上がっている。特に4姉妹と母が物語の中心なので、男性よりも女性のほうがより内容に共感できると思われる。

 主要登場人物の役者はすべて上手いし、その役柄を十分解釈して表現していて、そこも特筆すべき点なのだが、特に主演の次女役シアーシャ・ローナンが非常に魅力的。素晴らしい美貌というわけではないのだが、持っているパッションや繊細さを自然にかつ的確に演技分ける技量は相当なもので、私の大好きなケイト・ブランシェットの後を継ぐのは彼女のような気がして、今後出演する作品は追いかけてみたいと思う。

 アメリカ映画なのにアメリカ映画っぽくない雰囲気(浮かれ感のない硬質な感じ)だなぁと思っていたが、後で調べると4姉妹とローリーの若い主要5人がすべてヨーロッパとオーストラリア出身。やっぱり生まれというのも役者の持つ雰囲気に影響するのだなぁと新たな発見。