「第三の男」 1949年英 評価4 メジャー度4


監督:キャロル・リード
出演:ジョセフ・コットン、アリダ・ヴァリ、オーソン・ウェルズ他

1982年、2020年8月観賞

 アメリカの三文小説作家ホリーは、旧友のハリーから、仕事を依頼したいとのことで第二次大戦後のウィーンに招かれる。しかし、ホリーが到着したその日に、ハリーは車に轢かれて死亡し、すでに埋葬されていた。その後、ホリーが目撃者と話をするとどうも話が食い違っており、ホリーはハリーの死に疑問を感じはじめる。

 色々と伏線も張り巡らせてあるミステリアスな展開、陰影を上手く使った斬新な撮影など取り上げる点も多く、名作として名高い作品である。

 しかし、ホリーがなぜウィーンに呼ばれたかは釈然としないし、ホリー自身が依頼された講演でしどろもどろになったり、ハリーの恋人だったアンナに魅かれるが全く相手にされず、一貫して冴えない男として描かれるため、強烈な印象を残すオーソン・ウェルズ演じるハリーと比較して極めてアンバランスで、一つの作品として弛緩した側面が残る印象になってしまう。

 ミステリーとしての出来栄え、芸術的な映画としての価値は認識するが、38年ぶりとは言え、2回目で結末はわかっている点を差し引いたとしても、本作製作から70年が経った今、純粋に出来がいいかとなると、他の名作と比較すると肩を並べるまではいかないと思う。