「ドラゴン・タトゥーの女」 2011年米・スウェーデン・英・独 評価4.5 メジャー度4
監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー他
スウェーデンの大物実業家ヴェンネルストレムの武器密売を自誌「ミレニアム」でスクープしたミカエルだったが、がせネタをつかまされたもので、名誉毀損で訴えられ敗訴する。そんな失意のミカエルに、大企業の前会長であるヘンリック・ヴァンゲルから、自分の兄の孫娘であり聡明だったが36年前に16歳で忽然と失踪したハリエットに関わる事件の調査が依頼される。ヴェンネルストレムを叩くネタをもらえるという条件で受けたミカエルは、天才ハッカーで抜群の調査能力を持つ「ドラゴン・タトゥー」のある小柄で中性的な若い娘リスベットを助手に、過去の事件の真相を探り始める。
スウェーデンで2005年に発行され、大ベストセラーになった小説の映画化で、本作の前に、本国スウェーデンでも映画化されている。
現007ジェームズ・ボンドであるダニエル・クレイグ主演なので、そのうち記者であるミカエルが無双の暴れっぷりを見せるのかと思いきやさすがにそんなことはなく、本作の主人公は題名通り、ルーニー・マーラ演じるリスベットである。マーラ(現ホアキン・フィリップスのパートナー)は美貌を持ちながら、本作では眉をそり、全く笑みを見せない精神的、肉体的虐待を受けてきたリスベットをクールに演じており、彼女の存在が本作の価値を上げていることは間違いない。
内容は北欧の犯罪小説らしく、また映像はデヴィッド・フィンチャーらしく、病的でグロテスク(でも「セブン」ほどではない)ではあるが、36年前の過去の写真や聞き取りからの判明事項と、データからの分析内容から全貌が明らかになっていくストーリープロットはなかなか見事で2時間半以上という長さを感じさせない。また、リスベット自身、肉体的な強さを持っているわけではないので、変にアクション映画の方向に行っていないのも好ましい。
聞きなれない北欧の姓名と登場人物の多さから全貌を1回の観賞で完全に把握することは難しいのが難点ではあるが、一級のミステリー作品であるとともに、リスベットが初めての共同作業で意気投合したミカエルに恋愛感情を持っていく、人を信用するようになっていくという心の成長物語の側面もあり、切ないラストが印象深い。