「Fukushima 50」 2020年日 評価4 メジャー度4
監督:若松節朗
出演:佐藤浩市、渡辺謙、吉岡秀隆、安田成美、緒形直人他
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震及びその後の津波による被害は、日本人として忘れてはならない事象であったのはもちろんだが、特に原子力発電に携わるものとして、福島第一原発の事故は永遠に忘れられないものとなった。
その事故の際に福島第一原発で決死の作業を行ったフクシマ50と呼ばれた現場に残った社員や作業員など(実際はもっと多かった)を、所長であった吉田(唯一本名で登場)や当直長だった伊崎の視点から描く、事実を基にした久々の骨太の日本映画大作。
まず、普通に映画としてよくできている。地震発生から始まり、事故の第一弾の収束までを描いて、まったく中だるみするところがない。また、原子力発電所に実際勤務していた私から見ても、現場の状況は良く再現されているし(ちょっとバルブが簡単に回りすぎ)、放射能対策の描き方もまともであって、放射能の怖さがよく表現されている。避難者や家族も適度なちりばめ方で、最も関心するのは、この題材を扱っていながら、原子力に賛成でも反対でもない中立的な視点で描き上げた点。この難しい題材をよく料理したと思う。
ただ、現場の総務管理職を演じた安田成美が場違い(総務管理職員のおばさんに、標準語を話す、すらっとした美人などいない)なのと、さんざ米国大統領に電話連絡した挙句の米国の「トモダチ作戦」が簡単な物資輸送のみでしょぼく描かれているのがどうしても気になってしまうのだが、演技達者がわきを固め、主演二人が脂ぎった中年男で、近年珍しい貴重な映画である。