「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」 2019年米 評価3 メジャー度5


監督:J・J・エイブラムス
出演:デイジー・リドリー、アダム・ドライバー、ジョン・ボイエガ、オスカー・アイザック他


 「スター・ウォーズ」シリーズ最終章(のはず)。前作で少数となってしまった反乱軍。一方帝国軍にはなんと、パルパティーンのクローンが登場。ついに帝国軍と反乱軍+全宇宙に散らばっていた反乱分子の戦いに突入する。

 結果から言うと、前作ep8で無茶苦茶にしてしまった世界観をなんとかまともなものに収束させたというだけの作品。前作が悪すぎたため、その収束を最終目標にせざるを得なかったという悲しい背景があるものの、残念だがこの評価になる。本作で修正・回収した主な事項は以下で、ep8で噴出した欠点を修正したことがよくわかる。結果的にep8は全く不要だったということ
 ・貧民の子という設定だったはずのレイはパルパティーンの孫にすんなり移行
  (レイアもルークもそれは前から知っていたということにさえなっていた)。
 ・前作では一般人でもフォースを使えるかも、という終わり方をしたが、それ
  は全く触れられず、やはりジェダイの血を持った者のみが使えるということ
  に修正。
 ・前作で残った反乱軍(ファルコンに乗っていた数十人程度のはず)がいつの
  間にか数百人規模、戦闘機等もそれなりの数を保有している状態に変更。
 ・前作で恋愛感情を持ったはずのフィンとローズ(天童よしみ)は、そんなこ
  とはまるでなかったような関係へ。しかもフィンのお相手として黒人女性戦
  士が登場。ローズの登場シーンは激減。
 ・暴れん坊だったポーはこじんまりとして結局反乱軍の将軍に就任(特に将軍
  として何をするわけではない)
 ・やっぱりレイはジェダイ戦士としてしっかりと訓練を実施
 ・ep7でいきなりライトセーバーを使いこなしたフィンはやはりフォースを
  感じることができるということでジェダイの血を引いていることを示唆
  (これが最終章のはずだが、ディズニーになったからさらに続きそう。。。)

 上述のように多くのストーリー修正をしながら進行していくためかなり展開が早く、ep4〜6のようなゆったり感はなく、登場人物へ感情移入する時間がほとんどない。また、致命的におかしい演出もある。見せ場となるはずのレイとレンのチャンバラは、結局レンにはレイをやっつけようという意思はなく見せかけの戦いに過ぎないのでどんなに時間を割いても、トレーニングを積んだ動きであっても、オビ・ワン対アナキンのような心を揺らす戦いにはならない。宙に浮く何百もの戦闘機を電磁波で制御不能にするほどのパルパティーンの巨大なフォースはレイ一人をやっつけることができず、また、死んだレイをフォースで生き返らせるというのも暴挙だ(それができるのは暗黒面のフォースのみという設定のはず)。

 と、まぁ細かいことも書いたが、これも全9作を通して観ているため。本作単作として観ればそんなに悪い作品ではないが、結局最後のep7〜9を先のストーリーを考えずに作ってしまったことが大失敗のもと。ストーリー熟考して構築し3作に分ければこんなことにはならなかったはず。そこが、自分が生み出したものとして大事に考えるか(ルーカス)、商業価値を優先して考えてしまったか(ディズニー)の差であろう。正直、個人の感想としては、「スター・ウォーズ」はep6で終わったほうが良かった。

 唯一良かった点は俳優陣の成長で、特にレイ役のデイジー・リドリーは前作より顔つきが締まり、精悍なジェダイをよく演じていた点と、フィン役のジョン・ボイエガもあか抜けて戦士となり、前作のような演技面での弛緩性はほぼなくなっている。