「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」 2019年米 評価4 メジャー度3


監督:クエンティン・タランティーノ
出演:レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー他


 1960年代。TVドラマを主軸に活躍してきたリック・ダルトン(レオ)は、今は歳も取って落ちめで、若手の盛り立て役でのゲスト出演で食いつなぐ日々。リック専属のスタントマン、クリフ・ブース(ブラピ)はリックに忠実な友人。仕事がなくてもリックの運転手やら身の回りの世話をしている。そんな彼らの高級住宅街の家の隣に、新進気鋭の監督ロマン・ポランスキーと新妻シャロン・テートが越してくる。

 妊娠中のシャロン・テートが狂信的カルト集団から惨殺されるという史実をベースに、古き良きハリウッドを舞台にして話は展開していくのだが、映画好きが喜ぶ色々な小ネタがたくさんちりばめられている。

 役柄としてスティーヴ・マックイーンとブルース・リーが出てくるのだが、マックイーンが結構よく似ているし、名作「大脱走」をネタにしたシーンもある。ブルースはサングラスをしているシーンでのせりふ回しは良く研究されているが、サングラスをとったら、笑えるほどまったく似てない。。。この二人をフューチャーしたのは、ブルースがポランスキーに武術を教えていて、マックイーンもブルースの弟子という事実があるため。また昔の映画そのものの映像にCG合成したり、イタリアの西部劇に活路を見出すリック自身が、クリント・イーストウッドの当時の経歴を踏襲しているなど、いたるところに絶妙なスパイスが配備されている。

 何より魅力的なのが主役の3人。二日酔いでセリフを忘れてNGを連発する落ち目の自分に怒り泣きさけんだり、いい演技をしたと監督に褒められて感涙したりと、自分に正直な愛すべき元ハリウッドスターのリック。スタントマンとしての仕事はもらえず、恵まれね生活を送っているがそれに不平も言わず、また社会のルールは守る、自分自身の立ち位置を悟っているクリフ。純粋で可愛らしいハリウッド女優のシャロン。すべて、芸達者が演じているので、暴力は控えめ(ラストの弾けっぷりには笑えるが)だし、間のあるゆったりとした演出が多いのだが、それがかえってリックとクリフの良い関係が良くわかるし、シャロンも非常に魅力的。タランティーノ作品としてはかなり人間味のある暖かい内容だと思うが、私にとってはちょうどいい感じ。