「グリーン・ブック」 2018年米 評価4.5 メジャー度3
監督:ピーター・ファレリー
出演:ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリニ
著名なジャズピアノ演奏家の黒人ドン・シャーリーは、1960年代当時はまだ根強く差別主義が残っていた南部への演奏旅行に、ニューヨークのナイトクラブで用心棒をしていたトニー・リップを運転手兼用心棒として雇って帯同させる。インテリであるドンと粗野なトニーの間には初めぎくしゃくしたものがあったが、旅を続ける中でお互いに理解し、信頼関係で結ばれる仲になっていく。実話をもとにしたロードムービー。
2018年度のアカデミー作品、脚本、助演男優賞を受賞している。奇をてらったようなストーリー上の起伏は少ないが、実に丁寧な作りで、物語の布石としておいてある小ネタはすべて回収していくし、その中にコメディー要素も多分に含めつつ登場人物は魅力的で、観客の心を温かく包みこむ良作である。(先日観た「運び屋」も本作のように登場人物の心の機微を丁寧に描けなかったものか)
元来アメリカ人とヨーロッパ人の混血であるヴィゴは、粗暴だが仕事には律儀で家族愛に溢れた陽気なイタリア系アメリカ人を上手く演じているし、インテリのアフリカ系黒人を演じたマハーシャラは2016年の「ムーンライト」に続いてアカデミー助演男優賞を受賞し、今非常に注目されている役者。この二人を含め、目立った俳優は出ていないが、この演技面での手堅さも本作の魅力である。ちなみに、主人公であるトニー・リップ本人はその後、端役ながら「ゴッド・ファーザー」や「レイジング・ブル」などの名作でイタリア系マフィア役を中心に出演している。もともとそういう資質のあった人なのだろうと思うし、その魅力は本作でも上手く表現されている。
本作は海外では黒人を救う白人という白人主義的な内容ということで賛否両論らしい。日本人の感覚だと良くわからないが、欧米諸国の長い歴史に根差した人種差別の土壌があれば、そのような見方にもなるのかもしれないが、そのことで映画の評価まで変えるというのはどうなのだろう。私は、人種差別の深い歴史と信念は良くわからない故、純粋にいい映画だと思う。