「運び屋」 2018年米 評価3 メジャー度2


監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ブラッドリー・クーパー、ダイアン・ウィースト他


 クリント・イーストウッド監督・主演の最近の作品は「ミリオンダラー・ベイビー」(2004年)、「グラン・トリノ」(2008年)。それ以来、10年ぶりの作品となるのだが、上述2作品がいい出来なので、本作も期待していたものの、少し残念な評価となった。
デイリリーの栽培で名を馳せたアールだったが、インターネットの普及とともに商売が立ち行かなくなり、ついには栽培農地も住居も差し押さえとなってしまう。しかし、孫の結婚披露パーティの際に、その場にいた孫の友人から運送の仕事を持ちかけられ、アール自身はそれをコカインと気づいた後も、多額の報酬に魅かれ、運び屋として大量のコカイン運送を行うことになる。

 大筋はクライムストーリーなのだが、家族を顧みずデイリリーの栽培と仲間たちへの八方美人的な施しを行ってきたアールが、90歳という年齢に近づくにつれ、これまでの時間の過ごし方や家族への接し方に対し疑念を持つようになるというのが本筋。しかし、その重要な主題に対してのアールの描き方が中途半端であるため、話に説得力がない。
住居差し押さえになってから家族への再接触を図るのだが、その根拠となる独り身の寂しさや
孤独が描かれることはないし、また、取り巻く家族が案外あっさりと、自分勝手に生きてきたアールを許し、犯罪者と判明してさらに結束するという展開も解せないものがある。

 正直、私の青春時代以降、映画環境中に長らく一緒に過ごしたクリントが主演でなければ、評価はさらに下がるような内容。クリントももう88歳になって腕は細く、猫背にもなり、筋骨隆々のタフガイだったクリントがこうも老いてしまったかというところに、なんともいえない寂しさと時の経過の残酷さをも感じてしまう。