「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ(ディレクターズカット版)」
 1984年米・伊 評価5 メジャー度4


監督:セルジオ・レオーネ
出演:ロバート・デ・ニーロ、ジェームズ・ウッズ、エリザベス・マクガヴァン他


 1984年の公開時に観たのは3時間25分版(高校1年生)、1986年に完全版として3時間49分版が公開され、今回の観たのは(通算4回目)ディレクターズカットで4時間11分版。新たに発掘できたシーンが追加(画質は悪い)されたことにより、話は分かりやすく、より深みのある物語となった。

 1920年代、アメリカ禁酒時代のニューヨークダウンタウンで力をつけてきた若きギャング団の二人のリーダー、マックスとヌードルス。しかし、手を染める事業や犯罪が次第に大きくなるにつれ、方向性の違いをお互いに感じるようになる。野心の大きくないヌードルスは、マックスの危険な計画を阻止するため、その前段の仕事を警察に密告する。しかし、そのヌードルスの行動を陰で糸引く人間がいた。

 映像の美しさ、エンリオ・モリコーネの哀愁ある音楽、役者たちの渾身の演技、そして何より物語の構成のち密さと、4時間を超える長尺でありながら、ため息が出るほど、映画としての醍醐味が満載の作品である。私は実に30年ぶりに観たのだが、かなりのシーンの画面構成すら覚えているくらい、やはりそれぞれが印象的であるということだ。

 最近の映画評では「長すぎる」という言葉が多聞される。ストーリーやアクションを美しい映像・音楽と共に見せられる映画に慣れされている人にはそう感じるだろうが、映画は芸術なのである。芸術を理解するにはその映像が何を語るか、役者の表情に何を読み取るか、そういうものを観る側も把握してこそ真の価値がわかるのである。本作も、ただ単にストーリーを追うだけにしたら1時間は短尺可能と思う。しかし、例えばデ・ニーロ(素晴らしすぎる!)の一挙手一投足にその時点のヌードルスの気持ち、心の移り変わりがすべて投影されている。人間の行動とはそういうものであるということが、この映画に、より現実的な人間性を描き出す。

 確かに少しわかりづらいところもあるのだが、映画としてほぼ完ぺきなもので、幼き日の友情・慕情を胸に生きてきたヌードルスと、彼を取り巻く人生の過酷さ、老いての心の境地など、映像・音楽と共に無形のものが心に残るというところから文句なしの満点評価。