「ボヘミアン・ラプソディ」 2018年米 評価4.5 メジャー度4


監督:ブライアン・シンガー
出演:ラミ・マレック他


 私が洋楽に嵌り始めた1983年以降のクイーンは、一時期のピークを越えていたし、当時ヒットした「ラジオ・ガ・ガ」が楽曲としては平凡な出来であったことなどから、1975年の「ボヘミアン・ラプソディ」自体は素晴らしい名曲とは感じていたものの、クイーンというバンド自体をこれまで好んで聴くことはなかった。ところが、数年間にベストアルバムを聴いてみたところ、ボーカルのフレディ・マーキュリーのカリスマ性や、音楽の聴きやすさと多様性、そして何よりもカラオケで歌うと何とも言えない高揚感を得られるリズムとメロディに、やっとのことで気付いたのである。

 そんなクイーンの伝記であり、監督は「ユージュアル・サスペクツ」や「X−MEN」シリーズで、映画の醍醐味をよく知り尽くしているブライアン・シンガー(結局本作では最終的には降板させられているが)ということで、かなり期待して観た。

 とにかく、バンドのメンバー4人がそれぞれ本人にそっくり(フレディ役のラミ・マレックが一番似てないか。あと、ボブ・ゲルドフとかもそっくり)で、完全にやられてしまう。洋楽好きにはたまらない小ネタもちりばめられているし、クイーンのヒット曲をその誕生秘話的な内容と共に堪能させてくれる展開も、洋楽ファンとしてはたまらないもの。そして、バンドの結束と崩壊やフレディのマイノリティーとしての個人的悩みなどを経た上に、きわめて忠実に再現された1985年のライブ・エイドでの最高のステージに涙が止まらない。アイデア満載で芸術的でもある「ボヘミアン・ラプソディ」の詩とメロディの美しさもさることながら、観客と一体になる「ウィ・ウィル・ロック・ユー」「伝説のチャンピオン」などを聴くと、クイーンがいかに観衆との一体感を大切にしてきたバンドであるかがわかる。

 確かにバンドの伝記映画としてはありがちな内容だし、実際の事実を曲げたストーリー構築(フレディのエイズ罹患のメンバーへの告白時期や、すべての楽曲の名義をクイーンにした時期など)もコアなファンには気になるところであろうし、もっと、フレディの奇抜なカリスマ性を表現できていたら良かったが、それでも、洋楽を30年以上愛してきた私の評価はどうしても甘くなる。またクイーンの曲をカラオケで熱唱したくなったぞ!!