「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」 2017年米 評価2.5 メジャー度5


監督:ライアン・ジョンソン
出演:デイジー・リドリー、ジョン・ボイエガ、アダム・ドライバー他


 ジェダイは潰え、反乱軍が絶体絶命の危機にさらされる中、新ヒロイン、レイがルーク・スカイウォーカーに出会ったところから始まるep8。反乱軍はさらなる窮地に追い込まれ、ジェダイも、フォースの暗黒面に堕ちたシスも存在感をなくす、という、たったこの1行で本作のあらすじを表現することができる。

 スター・ウォーズシリーズの中では、子供とカエル人間が活躍し、30分で済む話を2時間にしたep1が最駄作(といっても15年ぶりのシリーズ復活作として+1で評価は4点)と思っていたが、それを超えるひどい作品である。

 元々SWシリーズは設定に甘いところがあるのである程度は許容するが、物語が物切れでそんなことありえるのか??といういい加減な設定、またはそれを前提とした展開が多すぎる。登場人物も謎を持たせ、観客の予想を覆すようなキャラが多いが、そんなものは少なくとも本作の中でどのファンも求めていない。そして本作で完全に脇役になったフィンとローズのエピソード(結局30分程度ゴタゴタやるが得たものゼロだし、信憑性もゼロ(整備士のローズがなぜ飛行機の操縦ができるのか、非常に少ない確率でありながらフィンの乗る飛行機に真横から衝突でき、しかも二人とも生きているというめちゃくちゃな展開など)。また、最後はローズがフィンを助けた形になり、ローズの愛の告白とキスとなるのだが、その間にお互いの気持ちの接近などの描写がないのに、あり得ない展開(レイアとハンソロの反発しながらも惹かれあうストーリーが懐かしい。。)。そして、そもそもローズのルックスはいかんだろ)を筆頭に確実に1/3は無駄なシーンで、SWシリーズでなければ評価2をつけるほど、映画としてなっていない。

 多くのファンが本作で最も期待していたルークとレイのストーリーも全く魅力がない。ルークはただの偏屈親父にしか見えない。カイロ・レンがダークサイドに落ちるのを止められなかったのが自分のせいだからって、確かにヨーダも初登場時は偏屈だったが、あそこまで頑なになることはないのではないか。カッコ悪いったらありゃしない。オビ・ワンは決してそうではなかった。また、レイを演じたデイジー・リドリーが太って明らかに顔が大きくなった。前作から時間的に直接つながるシリーズであるので、この辺は女優魂を発揮すべきではなかったか。今回は登場シーンも限られ、魅力を感じられない。

 最大の問題点は、フォースの扱いである。フォースはジェダイだけが使える特殊能力ではなかったのか?だからこそジェダイは伝説であり、厳しい選抜を経たものだけが鍛錬によりジェダイとなり得たのではないか。それに、フォースはいったいどこまでできることになってしまったのか?遠く離れた惑星に自らの分身を登場させ、カイロとレイにお互いの幻影を見させ、真空の宇宙空間に投げ出されたレイアは五体満足のまま宇宙船に帰還するなど、フォースで何でもできてしまう。だったらep4のレイアのホログラムは全然意味ないじゃん。乱発される特殊能力を持った生き物たちのアクション映画と何ら変わらない状態。その反面、ルークからレイへのジェダイの心得の伝達はあっという間に終わってしまうし、もうフォースの扱いが軽い軽い。それに、「フォースの力とともにあらんことを」ってセリフは、ジェダイ間またはジェダイがいる場での決まり文句ではなかったか。普通の人間同士がそれを乱発するのに著しい違和感。

 ルークは「フォースは全宇宙の生命体の力」(不正確)といい、ジェダイだけに備わった能力ではないということを匂わし、反乱軍はミレニアムファルコンに全員乗れるほどの数十人規模になり、どう考えたって帝国軍を打ち負かすことはできない。結局銀河全体のフォースという力をめいっぱい使って帝国をつぶすという、ドラゴンボールのような大団円になるか、本作でも弱弱しく気持ちがブレブレのカイロレンとレイが手を取り合って全世界を平和に導くといったハッピーエンドのどちらかしかないと思われ、今後のストーリー展開に明光はうかがえない。

 非常に残念なことにラストとなるはずの次作ep9を観たいという気持ちが沸かない。ハンソロ、ルークが死に、レイアは演じたキャリー・フィッシャーがもういない。レイは太って魅力が激減だし、カイロ・レンは相変わらずの弱弱しさ。ポーは無鉄砲な突撃操縦士でしかなく、フィンはただのわき役以上になりようがなく、ローズともども次作には出てこないでほしいレベル。誰を観たいというのだ??はっきり言って、主役となれる登場人物が皆無なのである。ep1〜3にはユアン・マクレガー、ナタリー・ポートマンという主役級を並べ、脇をリーアム・ニーソン、サミュエル・L・ジャクソン、クリストファー・リーなどの名優がかため、やはり俳優の魅力、それを土台にしたキャラクターの魅力が大事であることが本作を観ると痛いほどわかってしまう。

 肯定派はこれまでのSWの殻を破ったという評価が多い。それを行うこと自体は否定しないが、殻の破り方がめちゃくちゃで、1本の映画として純粋に出来が悪いし、シリーズものとして、次に期待を持たせるつくりになっていない時点で、単純に低評価になるのは必然である。