「沈黙―サイレンス―」 2016年米 評価3 メジャー度2


監督:マーティン・スコセッシ
出演:アンドリュー・ガーフィールド、リーアム・ニーソン、窪塚洋介、浅野忠信(男優)、イッセー尾形他


 1600年代中頃、島原の乱後の九州へ布教に赴いた高名なフェレイラ神父がその地で棄教したことを知った、かつて弟子だったロドリゴは、日本に出発することを決意する。しかし日本では政府に隠れて貧しく暮らす信者たちと、それを捕らえる役人による拷問で、キリスト教は厳しく弾圧されていた。信者たちの苦しい生活を目の当たりにし、何も救いを施さず沈黙を続ける神にロドリゴの信仰も揺らぎ始める。

 約1年前に読んで、内容の奥深さに感銘を受けた遠藤周作の実在の人物をモデルにした名作を原作とし、1988年「最後の誘惑」で人間味の溢れたキリスト像を描いて物議を醸した、ハリウッドの名匠スコセッシが映像化したとあって、かなり期待していたのだが、やはり、重く、各人の精神に考えることを強要させる小説は、映像がそれを超えることは決してできないことを改めて悟らされた。小説だからこそ行間で自分自身の解釈ができ、それが心に響くものなのだが、映像はやはり観ているその時間を調整できないため、時間の流れに自分の思考の整理がついていかないとどうしても印象が薄っぺらいものになってしまう。

 また、5年前の「ヒューゴの不思議な発明」の時でも切れが失われつつあることを感じさせたスコセッシの演出に加え、本作では圧倒的に主役の演技力が足りない。普通の暮らしから隔離されぎりぎりの状態のはずなのに、外装以外はいつも小ぎれいで、苦労して生きてきている感が内外面ともにまるで滲み出ていないし、感情の起伏をすぐに外面に出すという演技方法も安易だ。スコセッシがこれまで使い続けてきたデ・ニーロやディカプリオとは雲泥の差で、内容が内容だけにどうしても大きく評価を下げる要因となってしまう。