「この世界の片隅に」 2016年日 評価4 メジャー度2


監督:片渕須直
出演:アニメ


 第二次世界大戦中に広島市と呉市で少女からの時代を過ごした、絵を描くことが大好きなのんびり屋のすずを主人公とした、漫画を原作とした作品。映画館での予告編では、よくありがちな戦時中の人々の生活を描いた映画という感じで、まったく興味を惹かれていなかったのだが、公開後、非常に評価が高いため、急きょ鑑賞した次第。

 戦時中の子どもや若者を描いた映画やアニメというのはこれまでにも幾多あり、正直内容的に目新しいものはない。というか、きつい性格の姑が絡んできたり、時限爆弾で被災したりもするが、そんなにのんびりとは過ごせないだろう、というのが私の、終始一貫した印象。しかし、戦後70年が経過しているのである。私が若い時に観ていた作品は戦後30年とか40年。段々とその時代の描き方が柔らかくなるのは致し方ないところだと思う。今の時代に「はだしのゲン」や「火垂るの墓」というようなキツイ内容の映画を公開したところで観る人は少なく、多くの人の心には響かないだろう。

 物腰の柔らかいすず、優しい夫と嫁ぎ先の家族という小さな幸せが散らばっているベースの中でちょっとしたユーモアを交えながら、殺伐とすることなくそこで生きた人たちのたくましさや戦争の悲しさを伝えるという、この程度の内容にすることが現代の若い人たちの心に訴えるのだろうし、それはそれでいいのだ、と思う。