「2001年宇宙の旅」 68年米  評価5(5点満点) メジャー度4

監督:スタンリー・キューブリック
出演:ケア・ダレー他

 2001年。人類は,巨大な有人人工衛星を地球の周りに飛ばし,月にいくつかの基地を作るほど科学技術が発達していた。その頃,木星へ強烈な電波を発しているモノリスを月面で発見。5人の科学者はコンピューターで完璧に制御された宇宙船に乗り木星探査へ旅立つ。ところが,その宇宙船を制御していたコンピューターHALが反乱を起こし,宇宙船を乗っ取り,冬眠中だった3人の科学者の制御装置を止め,殺してしまう。ただひとり生き残った船長はなんとかHALをとめ,木星へ向かうが,木星近傍でモノリスと遭遇したとたん,人間の理解を超えた異次元空間へと導かれる。

 冒頭の人類の祖先が道具を使うようになる過程から月面のモノリスの登場まで,話の本筋とは関係ない部分だけで1/3の時間を取っているぐらい,ストーリーも映像もゆっくりと流れる。しかし,ちっとも退屈でないのは,映像が完璧なことと,超現実的な科学分析に基づいた映像によって,実際、宇宙の無重力空間では生き物はゆっくりとしか動けないという当たり前な事実(この当たり前な事実は,「スターウォーズ」や「エイリアン」等SFアクション映画では完全に無視されるが)を,いつのまにか見るものに受け入れさせるからに他ならない。中盤のコンピューター対人間の対決は,ゆっくりとしか動けないことを逆に利用し,緊迫感みなぎるシーンである。

 終盤の異次元空間から,部屋の中での船長の老人から胎児への変貌まで,理解しようとしてできるものではない。結局,人間なんか大宇宙の中のちっぽけな存在でしかなく,人間の知識ですべてを理解することなんかできるわけがない,ということを受け入れられるかどうかで,観る人にとってのこの映画の評価が決まるといってもいいだろう。

 とにかく,ケチのつけようがない。映像の素晴らしさ(40年も前に作られたとは到底思えない!),物語の緊迫感,あっという間に2時間20分が過ぎる。映画史上に残る名作である。

 同じようなSFものとしてアンドレイ・タルコフスキーの「惑星ソラリス」がある。こちらも負けず劣らずSF映画の傑作と思う。

【追記 2014/1】
 3回目を初めて映画館で観たが、その圧倒的なスケール、40年以上前においての映像、演出から小物にいたるまでの緻密さから、やはりこれは映画館の大スクリーンで観てこその作品だと痛感。上述のようなものすごい緊迫感と映像的スケールと映画としての在りようはまさに、“唯一無二”のものであり、名作として孤高の存在。その中に浸らされる時間は、観ている途中から「これは凄い映画だ」と感激し続けてしまうほどの至福のものである

 モノリスは宇宙空間に散在し、宇宙の誕生からすべての生き物の誕生から死までを記憶にとどめるような有機体なのだなぁというのが私の解釈。