「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」 2015年米 評価4.5 メジャー度1


監督:ジェイ・ローチ
出演:ブライアン・クランストン、ダイアン・レイン、ヘレン・ミレン、エル・ファニング 他


 1940年代から脚本家として活躍を始めたものの、第二次世界大戦後の赤狩りに巻き込まれ、不遇を託った映画人ハリウッド・テンの一人として長く排除された時代を過ごしたダルトン・トランボの伝記映画。

 トランボの映画といえば監督した問題作「ジョニーは戦場に行った」が私にとってはまず頭に思い浮かぶのだが、名前を隠してアカデミー脚本賞を受賞した作品として、かの「ローマの休日」と「黒い牡牛」がある。そんな超一流の脚本家が、不遇の時代をのり越え、自らの信念を曲げずに、自分の才能で映画界に返り咲いたという実話に感嘆する。また、その裏には家族からの信頼と支えがあったこと(映画のエンディングに出てくる、実際に多数残された家族のポートレートからもうかがい知れる)、多くの仲間の信用と裏切りを経てきたことに人間同士の絆の深さにも魂を揺さぶられる。

 映画の中には、ジョン・ウェインやカーク・ダグラス、エドワード・G・ロビンソンといった有名俳優が重要な役どころで出てくるし、映画関係のエピソードも多彩で、昔からの映画好きの人間にはたまらない内容である。俳優も、主人公を演じたクランストンは全く地味なTV主体の俳優であるがいい演技を見せているし、我々世代ではかつてのスクリーン・アイドルだったダイアン・レインが美しい妻役(実際のトランボの妻もすらっとした美人)として魅力的だし、ヘレン・ミレンは本当に憎らしいし、エル・ファニングはかわいいし、派手な配役ではないものの、とても魅力的な俳優陣も映画をより愛すべきものにしている。