「ゲッタウェイ」 1972年米 評価4.5 メジャー度3


監督:サム・ペキンパー
出演:スティーヴ・マックィーン、アリ・マッグロー 他


 刑務所に服役中の、銀行強盗のプロであるドグと、夫を救いだすために有力者に体を売った、仕事上もパートナーである妻キャロルの、地方銀行の強盗と、ギャング団と警察からの逃避行をサム・ペキンパーが監督。ペキンパーにとっての最大のヒット作となった。また、音楽はマイケル・ジャクソンの「スリラー」をプロデュースしたことでも有名なクインシー・ジョーンズが担当し、印象的な哀愁漂うメロディを提供している。

 とにかくこの時代の名作をみると、間の取り方や演出に抜群の上手さを感じざるを得ない。近年の犯罪映画は、いかにリアルに、痛々しく、一方でド派手に暴れまわるかという、アイデアと視覚的な部分に頼るものが多いが、現実的な描写の中でも生身の人間の心情に引き込んでいける映画的技量が卓越していれば、血糊が嘘くさくても、大げさな展開がなくても、現実味がある中での緊迫感というものが半端ない。

 銀行強盗を描く主ストーリーと並行して、信頼関係を失ってしまった夫婦の心の再生も描いている。実際この映画の撮影後に結婚したマックイーンとマッグローは沈黙の間や眼だけの語り合いで、二人の心情の移り変わりを、間接的ながらも的確に観客に悟らせる。心に傷を負った男を演じるマックイーンの、銀行強盗での仕事ぶり、カーチェイスやマシンガンをぶっ放すところなどで抜群のかっこよさを思いっきり堪能できるし、哀愁を帯びたテーマ音楽や時に耳障りな効果音の繰り返しなど、あらゆる面で上質な映画らしい映画である。