「最強のふたり」 2011年仏 評価4 メジャー度2
監督:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
出演:フランソワ・クリュゼ、オマール・シー 他
宝石泥棒を働き、失業中の黒人移民のドリスは、生活保護を受けるため必要な不採用通知が欲しくて形式だけの就職活動のため、パリに住む、頸髄損傷で首から下を動かすこともできない富豪フィリップの介護者募集の面接を受ける。気難しくて、介護人がすぐ辞めていってしまうというフィリップは、全くやる気もなく傍若無人の振る舞いをしたドリスを2週間の期限付きで採用する。ドリスはフィリップに一切気を使うことなく接し、フィリップは逆に、人生そのものをぶつけてくるそのようなドリスと意気投合していき、二人は次第に不思議な絆で結ばれていく。
実話をもとにした物語で、起伏のあるストーリーは面白いし、コメディとしても、軽い毒舌、下ネタ系が多く、私的にかなり笑わせてもらった。また、ドリス演じるオマール・シーのアクションの大きい笑顔が魅力で、ドリスを実は心優しく魅力のある人物に仕立て上げているとともに、その他の登場人物たちもみな根は良い人ばかりなので、幸せな気持ちになる良作である。
一方、障害者を描いたにしては、本人と周囲の苦悩が描かれず、気難し屋の設定のフィリップが、それを感じさせない物分かりの良い中年だったり、ちょっと話を綺麗にするための作り込みが過ぎた感じもあり、少し深さが物足りない。
ラストで実在のふたりのシーンが流れるのだが、ドリスは実は何の変哲もない中年の白人男性であり、本作でオマール・シーが演じたようなあふれるような魅力はなく、あぁ、この映画の本筋以外のところはほとんどがフィクションなのだな、と明確に判明してしまう。このシーンはかなりがっかりさせるので、挿入しない方が良かったのではないか。