「黄金」 48年米 評価3.5(5点満点) メジャー度2
監督:ジョン・ヒューストン
出演:ハンフリー・ボガート,ウォルター・ヒューストン他
メキシコで物乞いをするまでに落ちぶれたアメリカ人ドブス(ボギー)は,一攫千金を夢見て同じ境遇のアメリカ人の若者と砂金取りの熟練老人とともに,3人でメキシコの山奥に砂金取りに繰り出す。順調に砂金を手にした3人だったが取れた砂金の量が増えるに連れ,ドブスは人格が変り,仲間を疑りはじめる。そしてついには若者に銃を向ける。
疑心暗擬に取り憑かれていくボギーが恐い。ボギーといえば,「マルタの鷹」や「カサブランカ」の渋い男のイメージがあるが,本来はこの映画や「必死の逃亡者」や「眼下の敵」のような憎々しい性格の曲がった男で本領を発揮する。
物語は,ドブスが人格を変えていくあたりから俄然面白くなっていく。結局は若者と老人は生き残り,砂金を一人占めしようとしたドブスは盗賊に殺され,砂金はただの砂だと勘違いした盗賊によって風にまかれてしまう。人間の欲の醜さと最後に老人と若者が大笑いをしてこれが人生だと笑い飛ばす姿に人生の面白さを謳わせた作品。
ただ,昔の外国映画に良くあるが,屋外の場面を屋内で撮ってる(影がいくつもできているのですぐわかる)ところが随所に見られる。その辺が実際の土の匂い等,現実性を損なわせていることは否定できない。逆に言えば,それだからこそ(映像技術的にそうせざるをえない部分が多いにしても)屋外の場面はロケが大前提だった当時の日本映画の撮影法が,海外の映画人に衝撃を与えたのは想像に難しくない。