「キャロル」 2015年米 評価4 メジャー度3

監督:トッド・ヘインズ
出演:ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ 他


 1950年代ニューヨーク。カメラマンになることを夢見ながらも、デパートのおもちゃ売り場で働いているテレーズは、ある日、娘のクリスマスプレゼントを探している、上品で魅惑的な人妻キャロルと知り合いになる。若くて夢を追っているが現実の生活から抜け出せないテレーズと、古い考えをもった夫とそりが合わずに、愛する娘の親権を争っているキャロルの仲は、急速に接近していく。

 ケイト・ブランシェットは私の大好きな女優で、本作も彼女の演技を観に行ったようなものだが、女性が惚れてしまうのも納得という「男前さ」で、相変わらずどんな奇抜な役でも、すんなりと過剰にならずに演じてしまう力には惚れ惚れしてしまう。ブランシェットの演技もさることながら、相手役のルーニー・マーラも良い。オードリー・ヘプバーンを彷彿とさせるような美貌をもっているが、あまり人間的深みはない、現状に不満がある若い現代女性という役柄を、ブランシェット相手に見事に演じ切った。このような演出により、結局彼女は、美貌をもった、キャロルにとっては「天使のよう」な娘的存在でしかなく、それはキャロルの性別とは関係なく、一種の愛人でしかなかったことを物語っている。

 だから、ストーリー的には変哲のないものだが、レズビアンを正面から描くとともに、素晴らしい演技により、とても観応えのある映画になっている。