「サウルの息子」 2015年ハンガリー 評価2 メジャー度1
監督:ネメシュ・ラースロー
出演:ルーリグ・ゲーザ 他
1944年10月。ハンガリー系のユダヤ人のサウルは、アウシュヴィッツ収容所でゾンダーコマンド(ガス室で抹殺したユダヤ人の死体処理に従事する特殊部隊)として働いていたが、彼らも数ヵ月後には処刑される運命にある。ある日、サウルは、ガス室で死ななかった少年(すぐに別の手法で殺される)を見つけ、彼を自分の息子だとして何とか埋葬してやろうと奔走する。一方、ゾンダーコマンド達の間には収容所脱走計画が秘密裏に進んでいた。 カンヌ映画祭グランプリ受賞。アカデミー外国後映画賞ノミネート(2月時点)
サウル及びサウルが意識した被写体のみにピントが合う撮影法、感情を押し殺して次々い機械的にユダヤ人の死体を処理するストーリー、そしてなぜサウルはその少年を息子と言うのか(サウルの表情や登場人物たちのセリフからして息子とは感じられない)、また、大して技量も腕力もないサウルがなぜ仲間に重宝されているのかというミステリー的要素により、劇中、退屈ということは全くない。
しかし、この映画の描く全体の背景はホロコーストであるとはしても、映画という娯楽という側面からは、物語の核であるその2つの謎が、前者は結局解明されないし、後者は単に女性側の脱走計画の重要人物がサウルの妻であるという、何とも釈然としない結論になっている。またサウルたちは捕虜という立場なのでほとんどセリフのやり取りがないため、話の筋が極めて掴み辛い。結局はなんだそれ?という感じで一気に興冷め。
カンヌ映画祭グランプリ受賞作品に外れも多いというのはこれまでの経験から良く分かっていたが、アカデミー外国語映画賞にもノミネートされているので期待していたが、私はダメだ。これまで、たくさんの映画を観てきたが、やはり単なる評論家受けするだけの映画を、自分に偽りながら高評価にするほど、自分の嗜好に嘘はつけない。