「男ありて」 1955年日 評価3.5 メジャー度1
監督:丸山誠治
出演:志村喬、夏川静江、岡田茉莉子、三船敏郎 他
弱小プロ野球チームの監督、島村は、家庭は全て妻に任せ、家に帰った時もただチームのことだけを考え、娘にも息子にも無頓着。当然、子供たちは父親に反感をもっているが、妻だけは夫の優しい側面を知っており、健気に夫を支える。ところが、シリーズも終盤になり、少しでもリーグ順位を上げられるかと言う矢先、妻が急に亡くなる。
夫婦の愛を本筋に据えているのだと思うが、コメディー的な描写も多いし、志村自身が誠実な人柄でチームからは好かれているところもあり、作品全体に中心になるものを感じられないし、メリハリも少ない。かなり当時としてはネームバリューのある俳優を揃えているのにほとんど映画史に埋没してしまっているのは、大した映画を残さなかったこの監督の力量を示しているとも言えそう。
とはいえ、私生活でも親交の深かった志村と三船の共演シーンでは二人の仲のよさが画面から伝わってくるし、志村と夏川の、二人でお好み焼きをつつくシーンと優しい会話は夫婦の信頼感が画面全体に満ちていて、もちろんこれらは志村喬という俳優の持てる技量に寄るところも大きいのだが、ラストの妻の墓前での慟哭とともに、いくつかの秀逸で印象深いシーンは心に残る。