「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」 2014年米・加 評価4 メジャー度4


監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演:マイケル・キートン、エドワード・ノートン、エマ・ストーン 他


 かつて「バードマン」というアクションヒーローものの映画で主役を務め一世を風靡したものの、今は落ち目となったリーガンは、活躍の場をブロードウェイに求め、脚色、演出、主演を務める舞台での起死回生を図る。しかし、リハーサルの最中に怪我で降板した俳優の代役で来た一流の役者マイクの身勝手な言動に振り回されたり、もうひとりの自分(バードマン)の幻影に悩まされたり、順調ではないのだが、刻一刻と公演の日は迫る。

 リーガンが空を飛び、テレキネシスを使うという特撮が随所にみられ、また、精神的に病んでいることにより見る幻影も映像としてスクリーンに映し出されるため、結局それが物語を難解に、よくいえば観客に考えさせる隙間を作ることになり、また、数日間の出来事を切れ目なく映し出すテンポのいいストーリー展開であって、その内容の割にバランスのとれた映画だと思う。それよりも随所にちりばめられたブラック・ユーモアがおかしくくて、私はこの映画はコメディに分類すべきだと思うなぁ。

 一方、かつて実際に「バットマン」でヒーローを演じたマイケル・キートンを主役に、その娘役に「スパイダーマン」シリーズのヒロインを演じたエマ・ストーンを配する皮肉、アメコミヒーロー映画ばかりを製作している映画界やネットの情報が全てと考える現代人への皮肉など、様々なことをストーリーに織り込んでいるのだと感じるが、織り込みすぎて結局一番言いたいことは何なのか、ということがぼやけてしまっている感は否めない。

 ちなみに1台のカメラが、物語をずっと追っていく(ように見える)撮影は確かに新鮮で、それがアカデミー撮影賞をとった要因でもあるのだろうが、この手法はかのヒッチコックが60年以上前に「ロープ」で採用しており、別に物珍しくもなんともないんだがな。