「かぐや姫の物語」 13年米 評価3.5 メジャー度4


監督:高畑勲
出演:アニメ


 原作が誰もが良く知る「竹取物語」なので、ストーリーは言わずもがなだろう。しかし、私の記憶ではストーリーは良く覚えているが、なぜかぐや姫は月に帰ったのか、かぐや姫が何を考え地球で暮らしていたのか、というような描写はほとんどなかったと覚えている。そういう意味で本作が「かぐや姫の物語」という題名にしたのは、かぐや姫の心情をしっかり描くという監督の決意だったのだと思う。

 とはいえ、本作で描かれるかぐや姫は活発で現代的で、「竹取物語」が作られたとされる平安時代の女性とは比べようもなく、主題を明確にするために内容自体は現代に合わせたものといえ、原作との継承性をとやかく言うのは間違っている。この映画が言いたいのは、どんなに辛い事、悲しい事があってもそれが人生であり、そこから逃れてはいけない。それらをすべてひっくるめて、人生なのだということで、人間賛歌とでもいうべき内容である。

 映像としては、水彩、水墨画のような描き方は斬新だが、癖のある登場人物やちょっとした笑いの取り方、スペクタクルを感じるシーンなど、演出としては通り一遍だったのは残念。また、他のジブリ映画と共通してヒロインが魅力的である一方、気にかかるのが姫のためといいつつ、宮内での姫の身分や自分の身分の上昇に執心することに心を砕くようになる翁で、ラストで姫の本心に気づいたとしても、一連の行いは気持ちのいいものではない。