「ロッキー」 76年米 評価5 メジャー度5


監督:ジョン・G・アビルドセン
出演:シルベスター・スタローン、タリア・シャイア、バート・ヤング、
   カール・ウェザース、バージェス・メレディス他


 フィラデルフィアの場末のボクシングリングで野次に囲まれながら6回戦を戦うロッキー。素質はあっても真面目に取り組まないため借金取りのバイトをしながらその日暮らしをしている。一方、対戦相手の急な怪我により試合が中に浮いたヘビー級チャンピオンのアポロは、話題性のある相手として、無名のイタリア系サウスポーのロッキーを対戦相手に指名する。
中3、高3のときに観て以来、27年ぶり3回目の、初めての映画館での観賞である。初めの「ROCKY」の文字が右から左に流れながら、あの有名なテーマ曲が流れるところから鳥肌もんである。

 それはさておき、冷静に評価すると、人間ドラマの描き方が非常に丁寧で、俳優もタリア・シャイア、バート・ヤング、バージェス・メレディスという個性的で、確かな演技力をもった俳優を配しているだけあって、ヒューマンドラマとして秀でていることが再認識させられる。ロッキーはチンピラの借金取りをやっていても根が優しくて、説教くさくてドンくさい(この設定は最後の最後、「ロッキー・ザ・ファイナル」にのみ引き継がれる)。試合に勝つことはできないとしても15R終わって立っていることが、只のチンピラでないことを証明するという、そういう人物像を丁寧に描いた伏線が、ラストの有名な「エイドリア〜ン」に昇華され、もう、ラストに向けては慟哭がとまらない。その結果としてアカデミー作品賞までも受賞したのだろう。

 昔の印象からはどうしてもトレーニング・シーンや試合のシーンが心に残っているのだが、実は映画の半分以上はドラマ部分で、ロッキーのトレーニングすら始まらない。試合のシーンなんかは10分ぐらいしかない。しかもボクシング・マニアの私からすれば、ファイトシーンはとても稚拙で、シリーズ3作目以降はともかく、本作は断じてアクション映画ではない。

 とにかく、「ゴナ・フライ・ナウ」の旋律と、港湾を全力疾走し、フィラデルフィア美術館の階段を駆け上りガッツポーズをするロッキーの姿は、まともな少年、青年であれば感動しないわけはなく、私の心を何度も奮い立たせ、精神を強くさせた映画であることは紛れもない事実だ。この映画を若いときに観たことがなんとラッキーだったのか、とさえ何に対してかはわからないが、感謝したくなる。そして、幼稚と思われようが、それに影響を受けた自分がなんとなく好きになる。