「残菊物語」 39年日 評価3 メジャー度1


監督:溝口健二
出演:花柳章太郎、森赫子、高松錦之助他


 明治時代初期、東京の由緒ある歌舞伎一家の二代目若旦那は、芝居がうまくないが、その地位から誰もそれを指摘してくれない。そんなある夜、弟の子供の乳母をしていた若い娘お徳からその真実を聞かされ、物事を正直に話してくれるお徳に惹かれるが、その関係を良く思わない一家の離別の勧告に反抗し、お徳と共に大阪へ逃げ、さらには旅芸人にまで身を落とす。

 光の陰影の使い方や日本文化固有の独特の間の取り方、1シーン1シーンに持たせる意味の深さなどなど、芸術的に間違いなく秀でている作品であることはわかるのだが、物語自体はありふれたもので、セリフのやり取りも平凡。例えば成瀬巳喜男の「浮雲」のようにビンビンと感情に訴えかけるものがないというのがわかりやすい表現か。また、古い日本映画にありがちな、セリフの聞き取りづらさや、映像の悪さによる役者の表情の分かりづらさという欠点もあり、溝口健二の映画は「山椒太夫」「近松物語」「祇園囃子」に続き4本目だが、どうも私には合わないようだ。