「サマーウォーズ」 09年日 評価2.5 メジャー度3
監督:細田守
出演:アニメ
米国で開発したA.I.がネット社会に侵入。巨大化していたネット社会OZの個人アカウントから、あらゆるシステムを破壊する怪物ラブマシーンへと成長する。一方、先輩の夏希の策略で、夏希の祖祖母の住む長野につれてこられた数学に関して天才的頭脳を持つ健二とそこに住むネット上での格闘ゲームの最強キャラを操る中学生とその親族たちが中心となり、ラブマシーンを倒すべく一致団結する。
「おおかみこどもの〜」で疑念を抱き、この作品で確信したのが、この監督は人間世界の演出が下手糞ということ。確かに物語の目の付け所やビジュアル面は秀でているかもしれず、スピード感で突っ走るため観ている間、あれ?おかしいなとは思うが退屈はしない。しかし、ストーリーのかなり大切な部分や、セリフのやりとりが破綻している、又は全く意味がないところが多く、薄っぺらな感じになってしまう。
テレビ放映を観たので、約15分程度本編がカットされており、すべてが正しい解釈ではないかもしれないことをお断りする。ストーリーでおかしな点。@OZのセキュリティ管理権限の暗号パスを解いたのが健二であるという(実際はその暗号は間違っており、全世界に40人の正解者がいた)情報がテレビや警察当局の指名手配で流布されるが、不確かな情報を根拠に、暗号を解いた数時間後に顔写真付の情報が表出ることはありえない。Aラブマシーンは米国が開発した人工知能の力を試すために活動したのであり、それは成功し一段落した(だからこそ開発者の侘助に大金が振り込まれた)。それをまた大暴れさせたのは、一度目の戦いに敗れた主人公たち一握りの人間たちの報復であり、勝手に自分たちで種をまいて大騒ぎしているだけ。Bラブマシーンは夏希との花札ゲームで負けて崩壊するのだが、花札ゲームに乗ってきたラブマシーンの設定やネット上のゲームということで、さらに偶然性の占める割合が強いはずの花札における夏希の異常なまでの強さ。そのほかにも後から後からおかしな点はいくらでも出てくる。
そして演出面。健二が夏希の実家に連れられてきた理由(婚約者を装うこと)が当の祖祖母に会うまで全く秘密にされていたこと、健二の「大勢の親戚に囲まれた家族の生活が楽しかった」というほとんどそんな素振りも見せなかった上での唐突なセリフ、祖祖母の遺言に、夫の愛人の子として預かった侘助のことが(しかも腹が減っているだろうから、たくさん食わせろという。。。)延々と書いてあること等々、全く秩序のない演出があまりに多く、ヒューマンドラマ的な部分がひどい有様である。だから、なんか勝手に長野県上田市の外れで勝手に一握りの人が自己満足で大騒ぎしているだけのストーリーにしかなっていない。
結局、原作のある「時をかける少女」が一番出来が良く、本作と「おおかみこども」を観た限り、とても宮崎駿のような後に残る作品は作れないだろうなぁと感じてしまう。