「フェイク」 97年米 評価4.5 メジャー度2
監督:マイク・ニューウェル
出演:ジョニー・デップ、アル・パチーノ、マイケル・マドセン、アン・ヘッシュ他
FBI囮捜査官ジョー・ピストーネは、ブルックリンのマフィア組織に潜入すべく、初老の地区マフィアのリーダー、レフティに接触する。彼は“ドニー”と名乗り、レフティ及びその組織のグループとも親密な関係を築き始める。ドニーはマフィアの一員として活動をしながら、おとり捜査の成果を挙げていくとともに組織内での信頼も築いていくが、レフティの家族とも親密になり、素朴で情の厚いレフティに惹かれる一方、同じグループ内で台頭してきた若頭に手腕を見込まれ、その狭間で苦悩するようになる。
2時間半という比較的長い映画だが、全く気の緩む間もない。家族を犠牲にして二重生活をおくるドニーの寂しさ、一歩間違えば確実に殺されるマフィア組織の中での緊張感(実話であり、そのリアル感に戦慄)、そしてレフティとの友情と、見所が継続的に随所にあり、また、役者たちの迫真の演技もあり、硬派で重厚な仕上がりとなっている。
珍しい、純粋な二枚目役のジョニー・デップはもちろんカッコいいし、アン・ヘッシュも存外に色気と知性を感じる。しかし、なんといってもアル・パチーノである。ゴッド・ファーザー・シリーズの大ボス、マイケル・コルレオーネの佇まいとは対照的な、冷徹に殺害の任務は遂行するが、決して頭が切れるわけではなく、せいぜい地区のリーダーが精一杯の、先が見えた初老のマフィアの悲哀を細かな目の動き、姿勢、話し方など体全体から滲み出させる。ラストの、死を覚悟して家を出て行くところは目に焼きついて忘れられない。役者の演技が質を確実に上げたという作品は久しぶりの気がする。