「おおかみこどもの雨と雪」 12年日 評価4 メジャー度4
監督:細田守
出演:アニメ
大学生の花はおおかみおとこと恋に落ち、彼との子を二人儲ける。姉の雨と弟の雪はおおかみこどもとして育っていくが、まだ二人が幼い頃に父親が死んでしまう。女手ひとつで二人を育てる花は、人目のつかない田舎で自給自足での生活を選び、子供達におおかみ、人間としての生き方両方を否定せずにのびのびと子育てをしていく。
まず、絵の緻密さに驚かされる。背景の星空が回り、入道雲は静かに成長し、霧は微妙に揺れ動く。実写に近い自然の動きが、草原の風さえ運んでくるようだ。あと、個人的には「時をかける少女」にも見られた学生時代の恋とその雰囲気の描き方が上手いなぁと思い、前半部分はほのぼのといい流れである。その後、母子家庭の生活に焦点が移るのだが、母親の子を思う気持ち、特にラストの別れにはぐっと来るものがある。
しかし、そこまで評価が上がらないのは、決定的なマイナスポイントがあるためだ。なぜおおかみおとこは死んだのか。その理由は語られない。個人的には20歳という歳は狼には老齢であったというのが予想だが、それならそれでその設定をもっとうまく使えたはず。それと、夫がおらず、子育てのみをして貧困の極地にあったはずの花がどうやって何年も暮らし、田舎に引っ越す資金を調達したのか。生活への苦労という現実問題は語られない。まして花が「苦しい時も笑う」信条をもっているため、生活感のなさがどうしても気になる。子供たちをしからず、聖母のように見守る花の存在感が一向に重くならないのだ。結局、男である細田守はそこまで女を描ききれなかったのだろう。