「タクシードライバー」 76年米 評価5 メジャー度4


監督:マーチン・スコセッシ
出演:ロバート・デニーロ、シビル・シェパード、ジョディ・フォスター、ハーベイ・カイテル他


 不眠症に悩まされているベトナム帰りのトラビスは、夜勤のタクシードライバーの職を得るが、真夜中のニューヨークを流し、目の当たりにする強盗、娼婦、麻薬密売人などがウヨウヨしている現状に我慢がならない。おりしも大統領選挙が近づいており、選挙事務所に働く女性と近づきになるが、ポルノ映画に誘って破局。また、偶然客として乗ってきた大統領選候補者の一言に落胆し、この候補者の暗殺を単独企てることになるが・・・

 スコセッシが一躍表舞台に出ることになった名作。ベトナム帰還兵は手にできる仕事も限られ、世の中の底辺で這い上がるきっかけもないまま人生を終えるという孤独感、恐怖がありありと伝わってくる。ハッピーエンドでもなんでもなく、暗い気持ちのまま観終わってしまい、その点好き嫌いがはっきりする映画なのだが、この時期、のりにのっていたデニーロのエッジの聞いた演技、ジョディ・フォスターの12歳の娼婦、存在感抜群のカイテルなど役者陣は素晴らしい。特にデニーロは、両親の結婚記念日にカードを贈るような真面目さを持ち、正義感も強いが、教養はなく、女性との経験も浅く、危うい精神状態にいるトラビスを完璧に演じており、これだけでも観る価値があるとさえいえるが、音楽も、映像も、雰囲気もけちのつけようがない。24年前、23年前に続く3回目の鑑賞になり、当時の評価から5だが、芸術作品としてやはり名作であるのは揺るぎようがない。