「ヒューゴの不思議な発明」 11年米 評価3.5 メジャー度2
監督:マーチン・スコセッシ
出演:エイサ・バターフィールド、クロエ・グレース・モレッツ、ベン・キングズレー、ジュード・ロウ他
1900年前後の映画創生時期に、独創的かつ初めてSFを扱った映像などで一時代を築いたフランスの映画作家ジョルジュ・メリエス。しかし第一次世界大戦が始まり、庶民の目が娯楽に向けられなくなるとともに彼も人々に忘れられ、今はパリのリヨン駅の玩具店の店主として、過去を封印しひっそりと暮らしている。そんな時、彼が昔作った、字を書く機械仕掛けの人形の絵と構造図のノートを持った少年と出会う。
実際に、設定のようだったメリエスの人生をベースに、彼の作ったという仕掛け人形と純粋な少年をかけあわせ、メリエスの映画が再び脚光を浴びることになった過程を描く。3D映画であり、吹替版を作ったというぐらい、スコセッシ監督作品としては唯一といっていいほど家族でも観られるようなファンタジー物に仕上がっている。
しかし、純粋な少年が頑固な老人の心を溶かすという展開にしても、同い年の少女(「キック・アス」でブレイクしたクロエ・モレッツが魅力的というのがこの映画の一番の発見)と心を通わしながら、少年自身も成長するという流れもありふれたもので、構造図を記したノートの扱いなど、シナリオ上の欠点もある(映画のできには関係ないが、邦題も意味不明)。また、回顧する映画自体が1900年あたりなので、職業としての映画人ならともかく、これらの昔の映画に私の琴線が触れることもなく、「ニューシネマ・パラダイス」の感動にはまったく及ばない。まぁ、ごく普通の映画だが、機械仕掛けというのは男心をくすぐられるものがあり、その描写が3Dの効果もあって、なかなかよかったので少し平均より上という評価かな。
一応、アカデミー賞に11部門ノミネートされたが、受賞したのは撮影賞、視覚効果賞など、傍流の5部門。もし、これで作品賞や監督賞を取ってしまったら、スコセッシ自身、苦笑いせずにいられなかっただろう。