「ロッキー・ザ・ファイナル」 06年米 評価4.5 メジャー度4


監督:シルベスター・スタローン
出演:シルベスター・スタローン、バート・ヤング、ジェラルディン・ヒューズ他


 50代になったロッキー・バルボアは、引退後、住みなれた地元でレストランを経営している。一方、現在のヘビー級王者であるディクソンは、ヘビー級にタレントが少なく、いくら圧勝を続けても人気が上がらないことに苦悩していた。そんな時、テレビのコンピュータシミュレーション番組でのディクソンVSロッキーでロッキーが圧勝したことから、ディクソン側は、ロッキーにまた注目が集まっていることに着目し、話題性を得るため、ロッキーにエキシビジョンマッチで戦うことを持ちかけてくる。

 1作目は人生に影響を与えた名作。2作目もドラマとしてまずまずの出来。3,4作目は当時、中、高校生だった私にとっては面白いと感じられたアクション映画。5作目は既に映画通となっていた頃で、観るに値しないとして未見。6作目となる今作も初めは「何をいまさら」と思っていたが、映画評がかなり良いのでみた次第。

 50代と実年齢は曖昧にしているが、1作目(76年)とのインターバルを考えれば50代後半(スライの撮影当時の年齢は60歳)。そんな初老の男が現役バイバリのチャンピオンと戦うという設定自体に無理があるといってしまえばそれまで(ジョージ・フォアマンでさえ復帰は42歳で王座返り咲きは45歳)。しかし、さすがはスライもそこまで華々しくしようとは考えておらず、10ラウンドのエキシビジョンとしたこと(これにより、チャンピオンサイドが甘く見ていたという設定になる)、2ラウンド目でチャンピオンが左手を骨折と、あらかじめハンデを負わせての戦いとしたのは清い。

 それより、1作目で生き方に指標を与えられ、「ゴナ・フライ・ナウ」の音楽に精神を鼓舞されてきた(この旋律が流れてくると、今でも身と心が震える)男にしてみれば、こんなに心憎い仕上げをされた本作に喝采を贈るしかない。音楽はほぼ旧作と一緒。ジョギングをしてフィラデルフィア美術館前の階段を駆け上りガッツポーズをするところや、食肉工場のサンドバッグなど、旧作の名場面を、老いた動きをさらけ出して再演。息子とのやり取りはお決まりのパターンだが、いいアクセントにはなっている。新しいところはないが、1作目を観た当時とスライの30年間が交錯し、胸が騒ぐやら、哀愁を感じるやら、いろいろな感情が沸き立ってきて、冷静な映画評はほぼ不可能。とにかく、「ロッキー」に、「ゴナ・フライ・ナウ」の旋律に、男を奮い立たせた経験のあるものなら、人生の経験をつんだいまも愚直に強く生きることを問うロッキーに感動すること間違いない。ちなみに「ロッキー」を見てからこのファイナルを観ればさらに感動が倍増すること間違いなしだ。

 少々残念なのが、自分の人気が出ないことを悩み、昔のトレーナーに相談するチャンピオンの描き方が中途半端になってしまったこと。善玉のようでありながら、エキシビジョンの会見以降は通常の悪玉になってしまっており、この相手役をもっと丁寧に描いていれば、もう一段評価は上がっていたと思われる。