「007/カジノロワイヤル」06年米 評価3.5 メジャー度4
監督:マーティン・キャンベル
出演:ダニエル・クレイグ、エヴァ・グリーン、マッツ・ミケルセン、ジュディ・デンチ他
ニュー・ボンド、ダニエル・クレイグ主演の007シリーズ第21作目(同名で1967年の映画があるが、正規の007シリーズ映画ではなくコメディ)。とにかく、冒頭から、これまでのボンドとは違うぞ、というのを見せるがためか、撮影当時30代のニュー・ボンドは走る、跳ぶ、よじ登る、走る走る。躍動感がこれまでのボンドと一味違う。
話の筋としては、テロリストの金を預かり、株を操作することで利益を上げる悪人をボンドがやっつけるという、簡単に言うとそんな感じ。そこにお決まりの美女を絡ませたり、味方と思っていたものの裏切りや本当の悪人は?というサイドストーリーがあるにはあるが、よくわからないし、この映画に謎解きの面白さを求めているわけではないので、わかろうとしないことでさらにわからなくなっているのだが、といって評価が変わるわけではない。このシリーズは痛快に観れれば、それでよいのである。
その意味で、今回のボンドはいい。ダニエルは決して整った顔ではなく、どちらかというと猿顔なのだが、それが冷徹でいるとマックイーンのような渋さを感じさせる。これまでのロジャー・ムーアやピアース・ブロスナンはあまりに甘過ぎて、屈強な感じが余りせず、美女と寝ることのほうに神経がいっている感じがしていたものだ。
また、本シリーズはむやみに血飛沫が飛ばないのも、私にとっては良い。「プライベート・ライアン」以降、リアルに、または大げさに血飛沫をあげさせる方向に映画界全体が向かっているが、すべてをリアルに見せればよいというものではないと思う。現実にはそんなものは見ないですむのなら見たくはないのだから。
007は絶対死なないという安心感は、裏を返せば先が読めるというつまらなさにはつながってしまうのだが、躍動感のあるボンドに変わったことで本作はアクション映画として、かなり良い出来栄えだと思う。